裁判例結果詳細
行政事件 裁判例集
- 事件番号
昭和62(行ケ)1
- 事件名
選挙無効請求事件
- 裁判年月日
昭和62年11月22日
- 裁判所名
大阪高等裁判所
- 分野
行政
- 判示事項
1 公職選挙法203条に基づき,地方公共団体の議会の議員の定数配分を定めた条例の規定の違憲,違法を理由として選挙の無効を求める訴えが,適法とされた事例
2 地方公共団体の議会の議員の定数配分を定めた条例の規定の違法性の判断基準
3 兵庫県議会議員の定数並びに選挙区及び各選挙区において選挙すベき議員の数に関する条例(昭和41年兵庫県条例第60号,昭和57年同県条例第36号による改正後)の議員定数配分規定によれば,昭和62年4月12日に行われた同県議会議員選挙当時,いわゆる逆転現象が27通りも生じていた上,議員1人当たり人口最大区と最小区との間には,公職選挙法271条2項に基づく特例選挙区を含めた場合は4・52対1の,また,右特例選挙区を除外した場合は3・81対1の較差が生じており,右較差が示す選挙区間における投票価値の不平等は,地方公共団体の議会において地域間の均衡を図るため通常考慮し得る諸般の要素をしん酌してもなお一般的に合理性を有するものとは考えられない程度に達していたというベきであり,これを正当化すべき特別の理由も認められないとして,右投票価値の較差は,公職選挙法15条7項所定の選挙権の平等の要求に反するものというベきであるとした事例
4 公職選挙法271条2項に基づく特例選挙区を設置するための要件
5 兵庫県議会議員の定数並びに選挙区及び各選挙区において選挙すベき議員の数に関する条例(昭和41年兵庫県条例第60号,昭和57年同県条例第36号による改正後)において2選挙区が公職選挙法271条2項に基づく特例選挙区として存置されたことにつき,右2選挙区は,隣接の選挙区に陸続きで接しており,自動車による交通の発達した現在においては,隣接の選挙区に往来することについて格別の障害がなく,しかも,右2選挙区は,一貫して徐々に人口が減少してきており,いずれも同法15条2項の強制合区の対象となったときから昭和62年4月12日に行われた同県議会議員選挙のときまでには,隣接の選挙区に合区するなどして,不平等な議員定数の配分を是正するに必要な期間があったことが認められるから,右2選挙区を特例選挙区としたことには合理性がなく,相当でないとした事例
6 兵庫県議会議員の定数並びに選挙区及び各選挙区において選挙すベき議員の数に関する条例(昭和41年兵庫県条例第60号,昭和57年同県条例第36号による改正後)の議員定数配分規定が,昭和62年4月12日に行われた同県議会議員選挙当時,いわゆる逆転現象が27通りも生じていた上,議員1人当たり人口最大区と最小区との間には,公職選挙法271条2項に基づく特例選挙区を含めた場合は4・52対1の,また,右特例選挙区を除外した場合は3・81対1の較差が生じており,右較差は,遅くとも昭和50年の国勢調査の結果が判明した時点において,既に,公職選挙法15条7項所定の選挙権の平等の要求に反していたものというベく,右較差が将来更に拡大するであろうことは,兵庫県における各地域の人口変動の経緯に照らして容易に推測することができたにもかかわらず,右較差を放置し,同条項の規定上要求される合理的期間内にその是正をしなかったものというベきであるから,同条項の規定に違反するものといわなければならないとされた事例
7 兵庫県議会議員の定数並びに選挙区及び各選挙区において選挙すベき議員の数に関する条例(昭和41年兵庫県条例第60号,昭和57年同県条例第36号による改正後)の議員定数配分規定に基づいて施行された兵庫県議会議員選挙のうち神戸市西区選挙区ほか5選挙区における選挙の無効を求める請求につき,右選挙は違法であるが,行政事件訴訟法31条1項に示された一般的な法の基本原則に従い,選挙を無効とすることを求める請求を棄却するとともに当該選挙の違法を宣言するのが相当であるとした事例
- 裁判要旨
2 地方公共団体の議会の議員の定数配分を定めた条例の規定の制定又はその改正により,具体的に決定された選挙区割りと定数配分の下における選挙人の投票価値に不平等が生じ,あるいは,その後の人口の異動により,右不平等が生じ,それが,地方公共団体の議会において,地域間の均衡を図るため通常考慮し得る諸般の要素をしん酌してもなお一般的に合理性を有するものとは考えられない程度に達しているときは,右のような不平等は,もはや地方公共団体の議会の合理的裁量の限界を超えているものと推定され,これを正当化すベき特別の理由が示されない限り,公職選挙法15条7項違反と判断せざるを得ない。
4 公職選挙法271条2項は,憲法14条,公職選挙法15条7項によって要請されている選挙人の投票価値の平等の原則に対する例外規定であるから,同法271条2項による特例選挙区を設けるについては,当該選挙区が遠く離れた離島であるとか,峻険な山嶽に囲まれて交通が著しく不便であるというような地理的に極めて特殊な状況にあるため,隣接の選挙区に合区することが著しく不便であるなどの特別の事情の存することが必要であると解すベきである。
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