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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成19(行コ)6

事件名

 公有水面埋立免許処分取消請求控訴事件(原審・松江地方裁判所平成16年(行ウ)第8号)

裁判年月日

 平成19年10月31日

裁判所名

 広島高等裁判所  松江支部

分野

 行政

判示事項

 県知事が原子力発電所の増設のためにした公有水面埋立免許処分の取消しを求める訴えにつき,埋立予定地周辺に土地を所有し,同土地及びその周辺の土地において所有権に基づき,又は陸地における慣習法上の入会権若しくは公有水面における漁業協同組合の組合員としての漁業を営む権利に基づき,岩のり等を採取する権利を有すると主張する者らの原告適格を否定した事例

裁判要旨

 県知事が原子力発電所の増設のためにした公有水面埋立免許処分の取消しを求める訴えにつき,公有水面埋立法(昭和48年法律第85号による改正後)は,同法と目的を共通にする関係法令である環境影響評価法及び島根県環境影響評価条例並びにこれらの基本法である環境基本法の趣旨及び目的を参酌すると,大規模な公有水面埋立事業から自然環境の保全,災害及び公害の防止を図り,現在及び将来の国民の健康で文化的な生活を保護するものと解され,埋立免許処分が公有水面埋立法に違反してされた結果,事業地の周辺地域に居住する住民の生命,身体の安全が脅かされ,また,健康や生活環境に著しい被害が発生する場合には,その内容,性質,程度等に照らし,当該住民の具体的利益を一般的公益の中に吸収解消させることは困難であるから,個人の個別的利益としても保護する趣旨を含むと解すべきであるが,生命,身体の安全に影響を与えない,比較的小規模な埋立事業がもたらす生活環境に対する軽微な被害や,当該事業の環境への影響に起因する財産的被害(同法5条各号に規定された権利又は利益以外のもの)については,専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめていると解するのが相当であるとした上,前記埋立免許処分に係る埋立予定地に土地を所有し,同土地及びその周辺の土地において所有権に基づき,又は陸地における慣習法上の入会権若しくは公有水面における漁業協同組合の組合員としての漁業を営む権利に基づき,岩のり等を採取する権利又は利益は,同法5条各号に規定された権利又は利益には当たらない上,生命,身体の安全や健康被害とは直接の関係を有しない財産的性格を有するものであり,生活環境に係る被害としては比較的軽微なものというべきであるから,前記埋立免許処分において考慮されるべき利益には当たらないとして,前記岩のり等を採取する権利を有すると主張する者らの原告適格を否定した事例

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