裁判例検索

裁判例結果詳細

行政事件 裁判例集

事件番号

 平成19(行ウ)1

事件名

 行政文書非公開決定取消請求事件

裁判年月日

 平成19年10月31日

裁判所名

 さいたま地方裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 戸田市情報公開条例(平成11年戸田市条例第2号)に基づく住居表示台帳の写しの交付の方法による公開請求に対し,住居表示に関する法律9条2項に住居表示台帳の閲覧についての定めがあるから,他の制度との調整等について規定する前記条例22条1項により,同台帳は,同条例による公開請求の対象とならないとしてされた却下決定が,違法とされた事例
2 住居表示台帳に記録された情報が,戸田市情報公開条例(平成11年戸田市条例第2号)8条3号に非開示事由として規定する公共秩序維持情報に当たらないとされた事例
3 戸田市情報公開条例(平成11年戸田市条例第2号)に基づく住居表示台帳の公開請求は,前記台帳を商業的に利用することを目的として一括大量に請求しているのであって,前記条例が定めた文書公開制度の目的に反しており,権利の濫用に当たるとした主張が排斥された事例
  

裁判要旨

 1 戸田市情報公開条例(平成11年戸田市条例第2号)に基づく住居表示台帳の写しの交付の方法による公開請求に対し,住居表示に関する法律(以下「住居表示法」という。)9条2項に住居表示台帳の閲覧についての定めがあるから,他の制度との調整等について規定する前記条例22条1項により,同台帳は,同条例による公開請求の対象とならないとしてされた却下決定につき,前記条例22条1項は,法令等に行政文書の閲覧等について規定されている場合は,その定めるところによると規定しているところ,住居表示法9条2項は,公開の方法として閲覧についてのみ定めているから,写しの交付を求めている前記請求に対しては,前記条例22条1項の適用はなく,また,住居表示法9条2項が,関係人から請求があったときは,住居表示台帳又はその写しを閲覧させなければならないと定めたのは,当該区域の住居表示に事実上の利害関係を有する関係人に対し,その内容を知り得る機会を付与したにとどまるもので,前記条例その他の法令により同項に定める「関係人」以外の者に対する前記台帳の公開を禁止する趣旨までは含まないと解するのが相当であるとして,前記決定を違法とした事例
2 住居表示台帳に記録された情報につき,前記台帳には,地名地番及び建物の位置関係が記録されており,同情報と建築計画概要書に記録された建物の所在,構造,付近見取図等の情報とを組み合わせることによって,建物の新築,改築等に係る情報が公開されることになり,このような情報を利用して,悪質な業者が,当該区域の居住者等に対してダイレクトメールを送信したり,訪問販売をしたりすることは考えられるが,住居表示に係る情報は,基本的に広く社会に共有されることを前提とした情報であって,一般に知り得る性質のものであることからすると,前記台帳を公開することにより,公共の安全と秩序の維持に対する著しい支障が生ずるといえるほど,多くの市民が悪質なダイレクトメール等にさらされることが明らかであるとまでは認められないとして,前記情報は,戸田市情報公開条例(平成11年戸田市条例第2号)8条3号に非開示事由として規定する公共秩序維持情報に当たらないとした事例
3 戸田市情報公開条例(平成11年戸田市条例第2号)に基づく住居表示台帳の公開請求は,前記台帳を商業的に利用することを目的として一括大量に請求しているのであって,前記条例が定めた文書公開制度の目的に反しており,権利の濫用に当たるとした主張につき,前記条例における文書公開制度は,請求の理由及び請求対象文書の利用の目的を問わず,また,請求者の何人であるかを問わずに行政文書の開示を求めることができるとする制度であり,行政文書を公開することを原則とし,例外的に非公開とされるのは,同条例に規定する非公開情報に限っていることに照らすと,同条例に基づく公開請求においては,その理由や請求対象文書の利用目的は問われないと解するのが相当であり,前記請求の目的が前記のとおりであったとしても,前記請求が権利の濫用に当たるということはできず,また,公開を求める文書の量が多いとしても,そのことから直ちに前記請求が権利の濫用に当たると評価することもできないなどとして,前記主張を排斥した事例 
  

全文