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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成18(行コ)267

事件名

 遺族共済年金決定請求棄却処分取消等請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成16年(行ウ)第232号)

裁判年月日

 平成19年5月31日

裁判所名

 東京高等裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 地方公務員共済組合から退職年金を受給していた元組合員が行方不明となり失踪宣告によって死亡したものとみなされたことから,前記元組合員と別居していた戸籍上の妻がした遺族共済年金の決定請求に対し,同人が遺族に当たらないとして前記組合がした前記請求を棄却する旨の処分の取消請求が,認容された事例
2 地方公務員共済組合から退職年金を受給していた元組合員が行方不明となり失踪宣告によって死亡したものとみなされたことから,前記元組合員と別居していた戸籍上の妻がした遺族共済年金の決定請求の手続において,前記組合の職員がした行政手続法に違反する行為によって精神的苦痛を被ったとして,前記妻がした国家賠償請求が,一部認容された事例
 

裁判要旨

 1 地方公務員共済組合から退職年金を受給していた元組合員が行方不明となり失踪宣告によって死亡したものとみなされたことから,前記元組合員と別居していた戸籍上の妻がした遺族共済年金の決定請求に対し,同人が遺族に当たらないとして前記組合がした前記請求を棄却する旨の処分の取消請求につき,前記元組合員が行方不明となった当時において前記元組合員と前記妻とは事実上の離婚状態にはなかったところ,前記元組合員からの経済的援助がなければ,前記妻の生活水準の維持に支障を来すこととなったであろう関係が存したこと,前記元組合員が別居中に前記妻の住居を訪れることはなかったものの,別荘において年1回程度の頻度では会っていたことなどの事情を総合すると,前記時点においても同人と前記妻との間には経済面及び精神面での家族としてのつながりが認められ,別居の原因となった前記元組合員の暴力という事情が解消された場合には,再び起居を共にし,消費生活上の家計を一つにする蓋然性が高かったということができるから,前記妻は,同時点において,地方公務員等共済組合法施行令4条に定める「生計を共にしていた」との要件を満たし,遺族に当たるとして,前記請求を認容した事例
2 地方公務員共済組合から退職年金を受給していた元組合員が行方不明となり失踪宣告によって死亡したものとみなされたことから,前記元組合員と別居していた戸籍上の妻がした遺族共済年金の決定請求の手続において,前記組合の職員がした行政手続法に違反する行為によって精神的苦痛を被ったとして,前記妻がした国家賠償請求につき,前記妻が遺族共済年金の受給資格の認定基準を明らかにするよう求めたにもかかわらず,前記組合の職員が当該基準に関する明確な回答をしなかった行為は,同法(平成17年法律第73号による改正前)5条3項の規定に違反し,また,前記組合は,遺族の認定手続を事実上先行させ,遺族と認定された場合に決定請求書を申請者に交付してその提出を求めるという事前審査方式をとっているところ,前記妻の意向が,早期に決定請求書を提出し,前記組合の判断を求めることにあることが容易に認識し得る状況になった後も事前審査方式に拘泥し続け,請求書を交付しなかった行為は,同法7条の趣旨に違反しており,さらに,前記組合の職員は,前記妻からの処分日程の見通しの照会等に対してできる限り具体的な時期の見通しを示すよう努めるべきであったのであって,特に,前記妻が最初に決定請求の申出をした日から起算して標準処理期間である2か月に近い日にちが経過した時点における問い合わせに対し,標準処理期間と同程度の期間での処理が可能か否か等について,十分な説明が行われたと認められない点において,同法9条1項の趣旨にそぐわない不適切なものであったといわざるを得ないが,前記職員の違法行為等にもかかわらず,前記妻は,結果的には前記組合に対する主張立証を一応尽くすことができたと認められ,また,最初の決定請求の申出から前記請求を棄却する旨の処分が行われるまでに要した期間は標準処理期間を1か月程度超過した期間で済んでおり,さらに,その結果としての前記処分は誤った内容のものではあったものの併合提起された同処分の取消請求の判決によって取り消されることなどからすると,同法5条3項違反及び同法9条1項の趣旨にそぐわない不適切な行為については,前記妻に同処分の取消しによってもなお損害賠償によって慰謝されるべき精神的苦痛が存するとは認め難いが,前記のとおり決定請求書用紙を交付しなかったのは,決定の請求を受け付けない,受理しないとの処理をしているのと同じであることからすると,同法7条に定められた義務の趣旨に違反する行為によって,前記妻の受けた極めて大きい不安,不審の念による精神的苦痛,これに対応するために複数の官公署を訪れて相談せざるを得なかったことによる精神的苦痛は,損害賠償が必要な違法な損害に当たるとして,前記請求を一部認容した事例
 

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