裁判例検索

裁判例結果詳細

行政事件 裁判例集

事件番号

 平成18(行ウ)378

事件名

 免許取消処分無効確認等請求事件

裁判年月日

 平成19年12月6日

裁判所名

 東京地方裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 一級建築士であった者が,いわゆる名義貸しをしたとの理由で,建築士法(平成18年法律第92号による改正前)10条1項2号に基づく一級建築士の免許取消処分をするに当たり,国土交通大臣がした,免許取消しの日から起算して4年を経過するまでその免許を与えない旨の告知及び当該告知を受けた日から10日以内に一級建築士の免許証を地方整備局長に返還せよとの告知が,いずれも抗告訴訟の対象となる処分に当たらないとされた事例
2 自ら設計及び工事監理を行う意思がない建築物の建築確認申請書の設計者欄及び工事監理者欄並びに設計図書に自己の建築士としての名義を記載することを承諾(いわゆる名義貸し)した者に対し,建築士法(平成18年法律第92号による改正前)10条1項2号に基づき,国土交通大臣がした一級建築士の免許取消処分の無効確認請求及び取消請求が,いずれも棄却された事例

裁判要旨

 1 一級建築士であった者が,いわゆる名義貸しをしたとの理由で,建築士法(平成18年法律第92号による改正前)10条1項2号に基づく一級建築士の免許取消処分をするに当たり,国土交通大臣がした,免許取消しの日から起算して4年を経過するまでその免許を与えない旨の告知(以下「告知1」という。)及び当該告知を受けた日から10日以内に一級建築士の免許証を地方整備局長に返還せよとの告知(以下「告知2」という。)につき,同法10条1項により免許が取り消された場合,同法7条3号及び8条3号の各規定によれば,取消しの日から2年を経過し5年を経過するまでの者の申請に基づき免許が与えられるか否かは,その時点における同大臣の裁量判断によって決まることとなると解されるところ,告知1は,取消しの日から2年を経過しても4年を経過するまでは免許を与えないことになろうという前記取消処分時点での国土交通大臣の意向を示したものということができるが,この意向に,後に免許の申請がされた際の国土交通大臣が拘束されるとする法的根拠は存在しないから,告知1は,前記の者の免許取得を4年間禁止する法的効果を生じさせるものではなく,また,一級建築士免許取消処分を受けた者は,同法施行規則(昭和25年建設省令第38号)6条4項及び25条9号の規定上当然に免許証を地方整備局長に返納する義務を負うこととなるのであって,告知2によって返納義務が課せられるわけではないから,告知1及び2は,いずれも直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定するものではなく,抗告訴訟の対象となる処分に当たらないとした事例
2 自ら設計及び工事監理を行う意思がない建築物の建築確認申請書の設計者欄及び工事監理者欄並びに設計図書に自己の建築士としての名義を記載することを承諾(いわゆる名義貸し)した者に対し,建築士法(平成18年法律第92号による改正前)10条1項2号に基づき,国土交通大臣がした一級建築士の免許取消処分の無効確認請求及び取消請求につき,同法は,同項の懲戒事由がある場合,懲戒処分をするべきか否か,懲戒処分をするときにいかなる処分を選択すべきかの判断について具体的な基準を設けていないが,同項各号の懲戒事由がある場合に当該一級建築士に対して制裁を科すことによって,設計及び工事監理の業務が適正に行われること並びに一級建築士及び一級建築士免許制度に対する国民の信頼を維持するという同項の目的に照らせば,前記判断をするためには,懲戒事由に該当する行為の種類,性質,違法性の程度等の諸般の事情を総合的に考慮する必要があることから,懲戒事由がある場合に,懲戒処分をするか否か,懲戒処分をする場合にいかなる処分を選択するかは,懲戒権者であり免許権者でもある国土交通大臣の合理的な裁量にゆだねられているものと解され,また,同大臣がその裁量権の行使としてした同項の懲戒処分は,事実に対する評価が明らかに合理性を欠くこと,判断の過程において考慮すべき事情を考慮しないこと等によりその内容が社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められる場合に限り,裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用したものとして違法となるとした上,前記の者の名義貸し行為は同法18条1項及び20条1項に違反し,同法10条1項2号の懲戒事由に該当すると認められるところ,前記処分に係る聴聞の通知に瑕疵はなく,前記処分は,処分基準である平成11年12月28日付け建設省住指発第784号「建築士の処分等について(通知)」に従って適切に判断されたものであることなどからすれば,裁量権の範囲の逸脱又は濫用もないとして,前記各請求をいずれも棄却した事例

全文