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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成19(行コ)120

事件名

 行政文書不開示決定処分取消請求,訴えの追加的併合,行政文書不開示決定処分取消等請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成17年(行ウ)第64号(第1事件),第384号(第2事件),第383号(第3事件))

裁判年月日

 平成19年12月20日

裁判所名

 東京高等裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 司法試験委員会の議事の内容を録音した録音物が,行政機関の保有する情報の公開に関する法律2条2項にいう「行政文書」に該当するとされた事例 
2 司法試験委員会の議事の内容を録音した録音内容が,行政機関の保有する情報の公開に関する法律5条5号所定の不開示情報に該当するとされた事例
 

裁判要旨

 1 司法試験委員会の議事の内容を録音した録音物が,行政機関の保有する情報の公開に関する法律2条2項にいう「行政文書」に該当するかにつき,同項柱書の「組織的に用いる」とは,作成又は取得に関与した職員個人の段階のものではなく,組織としての共用文書の実質を備えた状態,すなわち,当該行政機関の組織において,業務上必要なものとして,利用され,又は保存されている状態のものを意味すると解され,これについては,当該文書等の作成又は取得の状況,利用の状況,保存又は廃棄の状況等を総合的に考慮して実質的に判断すべきとした上,司法試験委員会が事務取扱者による会議の録音を許可したのは,同委員会が,議事録又は議事内容の正確性を期するために,議事内容を録音しておくことの必要性を認め,録音された内容がみだりに他に漏れて会議非公開の趣旨を損なうことのないように,録音物の適正な管理が行われることを前提として,同委員会の庶務担当部署の職員に対し,会議の録音を許可したと解されることからすると,前記録音物の管理は,当該職員の個人的な管理にすべてを委ねるのではなく,前記部署において組織的な管理が行われるべきものとして,司法試験委員会から委ねられていると解さざるを得ないし,また,詳細かつ正確な議事要旨を作成することは,録音物に依存することなしには極めて困難であることなどからすると,前記録音物は「組織的に用いる」ものに該当するとして,同項にいう「行政文書」に該当するとした事例 
2 司法試験委員会の議事の内容を録音した録音内容が,行政機関の保有する情報の公開に関する法律5条5号所定の不開示情報に該当するかにつき,司法試験委員会が会議自体は非公開とし,議事の内容を議事録及び議事要旨の形で公開している趣旨は,司法試験の秘密にわたる事項が公になることを防ぐとともに,各委員が,会議での発言がそのままの形で公になることはないという保障の下に,言い間違いや論理の先後関係,多少の措辞の不適切さ等を気にすることなく,安心して自由,活発な議論に参加し,同委員会の意思決定の適正につなげることにあるところ,前記録音内容のように,会議における委員等の発言の音声,語気,語調などが機械的な忠実さでそのまま記録されている情報が公になれば,前記保障がなくなるため,同委員会における今後の会議において,自己の発言中のささいな言い間違いや論理の乱れ等に対するいわれのない誹謗中傷等の危険を厭うあまり,各委員が発言を自制ないし躊躇し,自由活発な議論が行われなくなることにより,率直な意見の交換が不当に損なわれるおそれがあり,また,出席委員らは,議事がそのままの形で公開されないことを前提として,それぞれの出身母体から離れ,司法試験の秘密に関連する事項とそうでない事項を区別することなく自由闊達に意見交換をし,これによって,同委員会の意思決定が円滑に行われているものと推測されることからしても,前記録音内容が開示されると,試験実施機関である司法試験委員会の円滑な意思決定を阻害するおそれがあるとして,前記録音内容は,同号所定の不開示情報に該当するとした事例
 

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