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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成18(行コ)10

事件名

 「P2センター」廃棄物埋設事業許可処分取消請求控訴事件(原審・青森地方裁判所平成3年(行ウ)第6号)

裁判年月日

 平成20年1月22日

裁判所名

 仙台高等裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 日本原燃産業株式会社が低レベル放射性廃棄物貯蔵センターを建設するために廃棄物埋設事業の許可申請をしたのに対し,内閣総理大臣が核原料物質,核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(平成10年法律第62号による改正前)51条の2,同法(平成11年法律第160号による改正前)51条の3に基づいてした前記事業許可処分の取消しを求める訴えにつき,前記廃棄物埋設施設から20キロメートル前後の範囲内に居住する住民のみが,原告適格を有するとされた事例 
2 日本原燃産業株式会社が低レベル放射性廃棄物貯蔵センターを建設するために廃棄物埋設事業の許可申請をしたのに対し,内閣総理大臣が核原料物質,核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(平成10年法律第62号による改正前)51条の2,同法(平成11年法律第160号による改正前)51条の3に基づいてした前記事業許可処分の取消請求が,棄却された事例 

裁判要旨

 1 日本原燃産業株式会社が低レベル放射性廃棄物貯蔵センターを建設するために廃棄物埋設事業の許可申請をしたのに対し,内閣総理大臣が核原料物質,核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(平成10年法律第62号による改正前)51条の2,同法(平成11年法律第160号による改正前)51条の3に基づいてした前記事業許可処分の取消しを求める訴えにつき,同法(前記改正前)51条の3第1項2号(技術的能力に係る部分に限る。)及び3号の設けられた趣旨,同各号が考慮している被害の性質等にかんがみると,同各号は,単に公衆の生命,身体の安全,環境上の利益を一般的公益として保護しようとするにとどまらず,廃棄物埋設施設周辺に居住し,核燃料物質等の漏出事故等がもたらす災害により直接的かつ重大な被害を受けることが想定される範囲の住民の生命,身体の安全等を個々人の個別的利益として保護すべきものとする趣旨を含むものと解するのが相当であり,前記直接的かつ重大な被害を受けることが想定される地域であるかどうかについては,事業許可申請に係る廃棄物埋設施設の種類,構造,規模等の当該廃棄物埋設施設に関する具体的な諸条件を考慮に入れた上で,その者の居住する地域と当該廃棄物埋設施設の位置との距離関係を中心に,社会通念に照らし,合理的に判断すべきものであるとした上,前記事業許可申請に係る廃棄物埋設施設に関する具体的な諸条件を考慮すると,前記廃棄物埋設施設において想定される事故によって直接的かつ重大な被害を受けることが想定されるのは,広めにみても前記廃棄物埋設施設から20キロメートル前後の範囲内に居住する住民に限られるとして,同範囲内に居住する住民の原告適格を肯定した事例 
2 日本原燃産業株式会社が低レベル放射性廃棄物貯蔵センターを建設するために廃棄物埋設事業の許可申請をしたのに対し,内閣総理大臣が核原料物質,核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(平成10年法律第62号による改正前)51条の2,同法(平成11年法律第160号による改正前)51条の3に基づいてした前記事業許可処分の取消請求につき,廃棄物埋設施設の安全性に関する判断の適否が争われる廃棄物埋設事業許可処分の取消訴訟における裁判所の審理,判断は,現在の科学技術水準に照らし,原子力安全委員会若しくは核燃料安全専門調査会の調査審議において用いられた具体的審査基準について不合理な点があるかどうか,又は当該廃棄物埋設施設が前記具体的審査基準に適合するとした原子力安全委員会等の調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤,欠落があるかどうかという観点から行うべきであり,仮に前記具体的審査基準が不合理であり,又は前記具体的審査基準に適合するとした原子力安全委員会等の調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤,欠落があって,主務大臣の判断がこれらに依拠してされたものであると認められる場合には,前記判断に不合理な点があるものとして,前記判断に基づく廃棄物埋設事業許可処分は違法になると解すべきであるとした上で,前記事業許可申請について行われた安全審査に係る具体的審査基準の内容,原子力安全委員会等が前記事業許可申請を受けて核原料物質,核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(前記改正前)51条の3第1項2号(技術的能力に係る部分に限る。)及び3号の要件への適合性に関してした調査審議及び判断の過程に照らすと,当該具体的審査基準に不合理な点があるということはできず,また前記施設が前記具体的審査基準に適合するとした調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤,欠落があるということはできないから,前記事業許可処分に違法があるということはできないとして,前記請求を棄却した事例

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