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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成16(行ウ)470等

事件名

 α線鉄道施設変更工事合格処分差止請求事件

裁判年月日

 平成20年1月29日

裁判所名

 東京地方裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 鉄道線路の一定区間を高架複々線化する鉄道施設変更工事について,地方運輸局長が7年の間にした鉄道事業法10条2項に基づく各完成検査合格処分の取消しを求める訴えが,いずれも却下された事例
2 地方運輸局長がした,鉄道事業法17条に基づく運行計画の変更の届出の受理行為が,取消訴訟の対象となる行政処分に当たらないとされた事例
3 鉄道施設変更工事により完成した高架鉄道施設に,鉄道運送事業者が鉄道を複々線で走行させることを許す地方運輸局長が行う一切の処分の差止めを求める訴えが,却下された事例

裁判要旨

 1 鉄道線路の一定区間を高架複々線化する鉄道施設変更工事について,地方運輸局長が7年の間にした鉄道事業法10条2項に基づく各完成検査合格処分の取消しを求める訴えにつき,鉄道施設変更工事に係る完成検査及びその結果としての合格処分は,鉄道事業者が鉄道事業法12条4項に基づいてした検査の申請ごとに別個にされるものと解すべきであり,1件の工事計画に基づくものであっても,検査及び合格処分が別々に行われている場合,それらを全部まとめて1個の行政処分と解することはできず,また,鉄道事業法の趣旨,目的のほか,鉄道施設変更の認可,工事計画変更の認可及び完成検査に関わる同法及び同施行規則の規定の趣旨,目的並びにこれらの処分において考慮されるべき利益の内容及び性質を考慮する限り,鉄道施設変更工事の完成検査を定めた鉄道事業法10条2項が,鉄道施設周辺住民の個別具体的な利益を保護すべきものとする趣旨であるとは解しがたいとした上,前記各検査合格処分のうち,一部については,前記訴えの提起までに既に出訴期間が正当な理由もなく経過したとして,また,その余については,前記鉄道施設変更工事の周辺住民は法律上の利益を有さず,原告適格が認められないとして,前記訴えをいずれも却下した事例
2 地方運輸局長がした,鉄道事業法17条に基づく運行計画の変更の届出の受理行為につき,同条は,鉄道運送事業者は,列車の運行計画の設定又は変更をしようとするときは,あらかじめその旨を国土交通大臣から権限の委任を受けた地方運輸局長に届け出なければならないとしているところ,同法及び同法施行規則上は,届出書の記載事項等を定めた同規則35条のほかに,前記運行計画の設定又は変更の届出に関する規定はなく,また,同規則は「受理」という用語を使用しているものの,前記受理行為に一定の法律効果を結びつけることもしていないから,前記届出に対し,地方運輸局長が,行政処分としての受理行為をすることは全く想定されていないとして,前記受理行為は,取消訴訟の対象となる行政処分に当たらないとした事例
3 鉄道施設変更工事により完成した高架鉄道施設に鉄道運送事業者が鉄道を複々線で走行させることを許す地方運輸局長が行う一切の処分の差止めを求める訴えにつき,行政事件訴訟法3条7号にいう「一定の処分又は裁決」とは,処分又は裁決の内容が具体的一義的に特定していることまでは要求していないものの,同法37条の4所定の差止めの訴えの要件について裁判所が判断することができる程度にまでは特定している必要があるとした上,鉄道事業法及び同法施行規則上の地方運輸局長の権限に属する処分は,列車の走行に直接関係すると考えられるものだけでも同規則71条1項各号の各処分があり,裁判所がどの処分を審理の対象として取り上げるべきかを知ることができないから,差止めの訴えの要件について判断することはできず,前記一切の処分は前記「一定の処分」に当たらないとして,前記訴えを却下した事例

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