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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成19(行ウ)26

事件名

 浚渫協議差止請求事件

裁判年月日

 平成20年2月27日

裁判所名

 横浜地方裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 港湾法37条1項3号及び同条3項に基づき,市が,港湾区域内の水域内において国が行う浚渫工事に関して国との協議に応じた行為の行政処分性
2 港湾法37条1項3号及び同条3項に基づき,市が,港湾区域内の水域内において国が行う浚渫工事に関して国との協議に応じた行為の取消しを求める訴えにつき,前記水域において漁業等をする者らの原告適格が否定された事例

裁判要旨

 1 港湾法37条1項3号及び同条3項に基づき,市が,港湾区域内の水域内において国が行う浚渫工事に関して国との協議に応じた行為につき,前記行為は,港湾区域内等における工事等の一般的な禁止を解除するという法的効果において同条1項にいう許可と異なることはなく,占用料及び土砂採取料の徴収の点を除いて,前記許可等の審査の基準や手続について国や地方公共団体の場合と私人の場合とで異なる取扱いを設けた規定もないことからすると,同項に規定する工事等の行為主体としての国及び地方公共団体の立場は,実質的に私人と異ならないというべきであり,また,前記行為には,その法的性質を行政機関相互間の内部的行為と考えるに足りる具体的な指揮監督関係や特殊性は認め難いというべきであるから,前記行為は,直接国民の権利義務を形成し,又はその範囲を確定することが法律上認められているものとして,抗告訴訟の対象となる行政処分に当たる。
2 港湾法37条1項3号及び同条3項に基づき,市が,港湾区域内の水域内において国が行う浚渫工事に関して国との協議に応じた行為の取消しを求める訴えにつき,同条にいう許可及び協議応諾に関する港湾法等の規定の趣旨及び目的,並びに,工事等によって害されることとなる漁業を営む者の利益の内容及び性質等を勘案すると,同条は,当該工事等の場所の周辺において漁業権に基づき漁業を営み,当該工事等による水質の汚染等によって,当該漁業を行うにつき著しい被害を直接的に受けるおそれのある者に対して,このような被害を受けないという利益を,一般的公益の中に吸収解消されない個別的利益としてもこれを保護する趣旨を含むものであると解する余地があるとした上,前記水域を含む海域に漁業権を有する漁業協同組合が国に対して前記工事について同意しているところ,各組合員の漁業を営む権利は漁業権から派生する社員権的権利にとどまることからすれば,漁業権の主体が漁業権に基づく一定の権利を行使した場合には,各組合員がこれに反する権利主張をすることはできないものといわざるを得ないから,前記同意の効力が継続している限り,前記組合とは独立して保護すべき法律上の利益を有していると解することはできず,また,農林水産大臣又は都道府県知事の許可を要する漁業を営む利益は,特定の水域から水産動植物を採取する利益という性質のものではなく,主として,広域な水域を対象として漁獲能率のよい漁業を行うことができる利益という性質を有するものといえるから,漁業権の場合と異なり,特定の水域における水産動植物との関係が希薄なものといわざるを得ず,同条により個別的利益として保護されていると解することはできないなどとして,前記水域において漁業等をする者らの原告適格を否定した事例

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