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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成19(行ウ)227

事件名

 在留特別許可処分義務付け等請求事件

裁判年月日

 平成20年2月29日

裁判所名

 東京地方裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 在留特別許可の義務付けを求める訴えの性質
2 日本国籍を有する女性と約16年間にわたる共同生活を続けたガーナ共和国国籍を有する男性がした,出入国管理及び難民認定法49条1項に基づく異議の申出に対し,法務大臣から権限の委任を受けた入国管理局長がした同申出には理由がない旨の裁決の取消し及び在留特別許可の義務付けを求めた各請求が,いずれも認容された事例

裁判要旨

 1 出入国管理及び難民認定法50条1項に基づく在留特別許可は,同法49条1項に基づく異議の申出があったときに初めて付与され得るものであるところ,法務大臣が同法50条1項の判断権限を発動し,その結果在留特別許可が付与されるか否かは,異議の申出をした容疑者にとって本邦への在留が認められるか否かの重大な利益にかかわる事柄であり,このような容疑者の重大な利益にかかわる判断権限を法務大臣の裁量で発動しないことが許されているとは到底解し得ないから,法務大臣は,異議の申出を受理し,同申出に理由がないと認める場合には,当該容疑者が同法50条1項各号に該当するか否かを審査する義務があり,その結果,その者に在留特別許可を付与すべきであると判断したときは,その旨の許可処分を,在留特別許可を付与すべきでないと判断したときは,異議の申出が理由がない旨の裁決をそれぞれ行うことによって,在留特別許可の許否についての判断の結果を当該容疑者に示す義務があると解するのが相当であるとした上,このような仕組みによれば,同法は,同法49条1項の異議の申出権を,法50条1項の在留特別許可を求める申請権としての性質を併せ有するものとして規定し,かつ,当該申請に対しては在留特別許可を付与するか否かの応答をすべき義務を法務大臣に課したものと解するのが自然であるから,在留特別許可の義務付けを求める訴えは,行政事件訴訟法3条6項2号に規定するいわゆる申請型義務付けの訴えと解するのが相当である。
2 日本国籍を有する女性と約16年間にわたり共同生活を続けたガーナ共和国国籍を有する男性がした,出入国管理及び難民認定法49条1項に基づく異議の申出に対し,法務大臣から権限の委任を受けた入国管理局長がした同申出には理由がない旨の裁決の取消し及び在留特別許可の義務付けを求めた各請求につき,本邦への在留を希望する外国人が,日本人との間に法律上又は事実上の婚姻関係がある旨を主張し,当該日本人も当該外国人の本邦への在留を希望する場合において,両者の関係が,両性が永続的な精神的及び肉体的結合を目的として真摯な意思をもって共同生活を営むという婚姻の本質に適合する実質を備えていると認められる場合には,当該外国人に在留特別許可を付与するか否かの判断に当たっても,そのような事実は重要な考慮要素としてしん酌されるべきであり,他に在留特別許可を不相当とするような特段の事情がない限り,当該外国人に在留特別許可を付与しないとする判断は,重要な事実に誤認があるために全く事実の基礎を欠く判断,又は事実に対する評価が明白に合理性を欠くために社会通念に照らし著しく妥当性を欠くことが明らかな判断として,裁量権の逸脱,濫用となるものと解するのが相当であるとした上,前記ガーナ共和国国籍を有する男性は,日本国籍を有する女性と約16年間の長期にわたる共同生活を続けてきたものであり,この間の生活状況は,内縁関係と呼ぶにふさわしい実質を備えたものであったことがうかがわれ,前記裁決の翌日には婚姻の届出がされたことにより法律上の婚姻関係も成立していることなどに照らせば,前記入国管理局長は,前記裁決に当たり,前記男性と女性との関係が婚姻の本質に適合する実質を備えていると認められるにもかかわらず,これを誤認したか,又は,これを過小に評価することによって,前記男性に在留特別許可を付与しないとの判断をしたものということができ,他に在留特別許可を不相当とするような特段の事情が認められない以上,前記判断は裁量権の逸脱,濫用になるというべきであるとして,前記裁決の取消請求を認容し,在留特別許可の義務付けの請求については,在留資格及び在留期間等の条件を指定しないで認容した事例

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