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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成19(行コ)360

事件名

 農地転用許可拒否処分取消等請求控訴事件(原審・さいたま地方裁判所平成18年(行ウ)第54号)

裁判年月日

 平成20年3月26日

裁判所名

 東京高等裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 農地法5条,同法施行令1条の15第1項に基づき,農業委員会を経由して処分行政庁である県知事に対し農地転用許可申請をした者が,農業委員会が同申請を受理しなかった行為は県知事による申請に対する拒否処分(却下処分)に当たるとしてした,その取消しを求める訴えが,却下された事例
2 農地法5条,同法施行令1条の15第1項に基づき,農業委員会を経由して処分行政庁である県知事に対し農地転用許可申請をした者が,農業委員会が同申請を受理しなかったことから,県知事は前記申請に対する応答義務を怠っているとしてした,不作為の違法確認を求める請求が,認容された事例

裁判要旨

 1 農地法5条,同法施行令1条の15第1項に基づき,農業委員会を経由して処分行政庁である県知事に対し農地転用許可申請をした者が,農業委員会が同申請を受理しなかった行為は県知事による申請に対する拒否処分(却下処分)に当たるとしてした,その取消しを求める訴えにつき,同項は,同法5条1項の許可を受けようとする者は,申請書を,農業委員会を経由して都道府県知事に提出しなければならない旨を定めており,農業委員会は申請書の提出先とされているが,それ以上に,都道府県知事が,農業委員会に対し,前記許可に係る権限を委任し,又は嘱託したものと解すべき根拠はなく,農業委員会が,同項の許可の申請書の提出を受けながら,これを都道府県知事に進達せず,これを受理しないとの対応をした場合には,申請の当否に関する都道府県知事の審査は全く行われておらず,その判断権が行使されたとみる余地はないから,農業委員会の前記対応をもって,都道府県知事が,申請に対する拒否の処分をしたものと解することはできないとして,前記訴えを却下した事例
2 農地法5条,同法施行令1条の15第1項に基づき,農業委員会を経由して処分行政庁である県知事に対し農地転用許可申請をした者が,農業委員会が同申請を受理しなかったことから,県知事は前記申請に対する応答義務を怠っているとしてした,不作為の違法確認を求める請求につき,同法5条1項の許可に係る申請書の提出先は農業委員会とされているところ,農業委員会は,農業委員会等に関する法律に基づき設置された市町村の行政機関であって,地方自治法に基づき設置された都道府県の行政機関である都道府県知事からは独立した行政委員会であるが,行政組織法上,処分行政庁からは独立した行政機関を経由機関として,申請を受理する法制度の下においては,申請権を有する者が,経由機関に申請書を提出した場合には,これによって,処分行政庁の応答を得ようとする意思の表明があることは明らかであって,処分行政庁は,申請に対し,相当の期間内に応答する義務を負うことになると解すべきであり,相当の期間を経過しても,申請に対する応答がされない場合には,処分行政庁は,申請に対する応答義務を怠るものとの評価を免れないとした上,同法施行令1条の15第2項,1条の2第2項,同法施行規則2条の3によれば,農業委員会は,申請書の提出があった日の翌日から起算して40日以内に,当該申請書に意見を付して,都道府県知事に送付しなければならないものとされているにもかかわらず,前記農業委員会が,40日を経過しても,前記申請に係る申請書を県知事に送付せず,県知事は,前記申請に対し,何らの応答もしていないことからすれば,県知事は,前記応答義務を負うに至ったにもかかわらず,同義務を怠っているというほかはなく,その不作為に合理的な理由はないから,県知事が相当の期間を経過しても前記申請に対し何らの処分もしないことは違法であるとして,前記請求を認容した事例

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