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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成19(行ス)25

事件名

 仮の義務付け決定に対する抗告事件(原審・大阪地方裁判所平成19年(行ク)第40号)

裁判年月日

 平成20年3月28日

裁判所名

 大阪高等裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 市町村の教育委員会が当該市町村の区域内に住所を有する児童生徒等について,就学すべき学校として当該市町村の設置する特別支援学校を指定した上,児童生徒等の保護者に対し,当該学校の入学期日を通知する行為の行政処分性
2 未成年の子の母親が,行政事件訴訟法37条の5第1項に基づいてした市教育委員会が前記未成年の子を市の設置する特別支援学校である養護学校に就学させるべき旨の指定通知をすべきことの仮の義務付けを求める申立てが,認容された事例

裁判要旨

 1 市町村の教育委員会が当該市町村の区域内に住所を有する児童生徒等について,就学すべき学校として当該市町村の設置する特別支援学校を指定した上,児童生徒等の保護者に対し,当該学校の入学期日を通知する行為につき,学校教育法施行令(昭和28年政令第340号)の定める特別支援学校への就学等に関する手続規定は,当該市町村が特別支援学校を設置しておらず,当該市町村の区域内に住所を有する児童生徒等の住所の存する都道府県の設置する特別支援学校へ就学させる通常の場合について定めたものであって,視聴覚障害者等を就学させるべき特別支援学校を設置している市町村においては,その設置する小学校又は中学校に就学予定者を就学させる場合に準じ,前記指定及び通知を行うことが法令上予定されているところ,前記指定及び通知をする行為は,当該市町村との間で当該児童生徒等について当該指定に係る特別支援学校との間の在学関係を成立させるとともに,当該児童生徒等の保護者について当該児童生徒等を当該指定に係る特別支援学校に就学させる義務を発生させる法的効果を有するものとして,抗告訴訟の対象となる行政処分に当たる。
2 未成年の子の母親が,行政事件訴訟法37条の5第1項に基づいてした市教育委員会が前記未成年の子を市の設置する特別支援学校である養護学校に就学させるべき旨の指定通知をすべきことの仮の義務付けを求める申立てにつき,学校教育法(平成19年法律第96号による改正前)71条の4(現行法75条に相当),学校教育法施行令(平成19年政令第363号による改正前)22条の3にいう病弱者に該当するか否かは,当該児童生徒等に対し,普通校の通常の学級において特別の指導及び支援を要さずに学校教育法が予定する所定の教育を施すことができるか否かなどの観点から,医師の診断結果に基づき,疾患の種類及び程度並びに医療又は生活規制の内容及びそれに要する期間等を考慮して判断すべきであるところ,前記未成年の子の疾患は,その状態が継続して医療又は生活規制を必要とする程度であるから,同人は病弱者に当たるというべきであり,かつ,同人が,その障害を理由に第1学年時において在学していた小学校における学校生活に十分適応することができなかったなどの事実関係の下では,現時点において同人が市の設置する小学校において適切な教育を受けることができる特別な事情があると認めることは著しく不合理であり,同人を就学させるべき特別支援学校として市の設置する養護学校を指定することについて法令上の障害はないから,市教育委員会は,同令12条の2第1項に規定する場合に準じ,前記未成年の子を就学させるべき特別支援学校として同学校を指定しなければならず,市教育委員会が前記未成年の子を同学校に就学させるべき旨の通知をしないことは,その裁量権の範囲を超え又はその濫用といわざるを得ないから,本案について理由があるとみえると認められ,また,現状のままでは,今後とも不登校の状態が続き,同人の心身の健全な発達が一層阻害されることは明らかであるから,償うことのできない損害を避けるための緊急の必要があるなどとして,前記申立てを認容した事例

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