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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成17(行ウ)55

事件名

 神奈川県臨時特例企業税通知処分取消等請求事件

裁判年月日

 平成20年3月19日

裁判所名

 横浜地方裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 一定規模の法人に対し地方税法4条3項等の規定に基づく道府県法定外普通税として臨時特例企業税を課す神奈川県臨時特例企業税条例(平成13年神奈川県条例第37号)が,地方税法(平成15年法律第9号による改正前)72条の14第1項の趣旨に反し無効とされた事例
2 一定規模の法人に対し地方税法4条3項等の規定に基づく道府県法定外普通税として臨時特例企業税を課す神奈川県臨時特例企業税条例(平成13年神奈川県条例第37号)に基づいて納付した臨時特別企業税等の還付請求が,認容された事例

裁判要旨

 1 一定規模の法人に対し地方税法4条3項等の規定に基づく道府県法定外普通税として臨時特例企業税を課す神奈川県臨時特例企業税条例(平成13年神奈川県条例第37号)につき,地方税法は,地方団体において,法定の税目を除くほか,別に税目を起こして普通税を課することができるものと規定しているところ,この法定外税の趣旨は,道府県において,第一義的には法定税を課する一方で,道府県の自主的な課税権に基づき,その実情に応じて法定税の課税を補充するため,法定税以外の課税をすることにあるということができるが,法定外税の創設により法定税に係る規定の趣旨に反する課税をすることは,道府県において法定税を法定の準則に従い課すべきものとした地方税法の趣旨に反し許されず,同法(平成16年法律第17号による改正前)259条ないし同法290条に規定する要件及び手続を満たしたかどうかにかかわらず違法というべきであるとした上,前記企業税及びその規定の趣旨,目的は,法人事業税における欠損金額の繰越控除のうち一定割合についてその控除を実質的に遮断し,当該部分に相当する額を課税標準として法人事業税に相当する性質の課税をする効果を意図しつつ,この割合を税率の設定に反映させ,課税標準を繰越控除欠損金額に相当する当期所得額として,同性質の課税をすることにあり,実質的には,法人事業税に相当する性質の課税をする効果を持つものということができるところ,法人事業税の規定は,法人の所得を長期的に把握し,もって法人の担税力を的確に課税に反映させることを目的とするところであり,一定の事業年度内に欠損金額がある場合には,当期の所得から繰越控除欠損金額を除いた額が課税標準となり,その限度で法人事業税の課税がされることとなるという効果を有するものであるのに対し,前記企業税の課税は,法人事業税の課税対象である所得から控除される部分の当期所得を課税対象とする目的を有し,その効果を持つものであるから,法人事業税における欠損金額の繰越控除と,前記企業税の課税とは,その目的及び効果が相反するものであり,法人事業税と前記企業税が同時に課せられる法人については,前記企業税の課税により,法人事業税の課税標準につき欠損金額の繰越控除を定めた規定の目的及び効果が阻害されることになるといえるから,前記企業税の課税は,法人事業税の課税標準である所得の計算につき欠損金額の繰越控除を定めた規定の趣旨に反し違法であって,これを定めた前記条例も違法であり,同条例を制定することは,地方団体の有する条例制定権を超えるものであるとして,前記条例を無効とした事例
2 一定規模の法人に対し地方税法4条3項等の規定に基づく道府県法定外普通税として臨時特例企業税を課す神奈川県臨時特例企業税条例(平成13年神奈川県条例第37号)に基づいて納付した臨時特別企業税等の還付請求につき,前記企業税の課税は,法人事業税の課税標準である所得の計算につき欠損金額の繰越控除を定めた規定の趣旨に反し違法であるから,これを定める前記条例は違法,無効というべきであって,無効な前記条例に基づいて納付された前記企業税等は,県にとって法律上の原因を欠く利得であるから,その還付を請求することができるとして,前記請求を認容した事例

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