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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成13(行ウ)12

事件名

 行政文書非開示処分取消請求事件

裁判年月日

 平成20年3月11日

裁判所名

 仙台地方裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 行政機関の保有する情報の公開に関する法律5条3号の不開示情報該当性の主張立証責任
2 2か国の在外日本国大使館及び1か国の在外日本国総領事館における「報償費」の支出に関する文書のうち,定例的に必要とされた物品の購入や役務の経費として使用されたもの((1)大規模レセプション経費,(2)酒類購入に係る経費,(3)本邦関係者が外国訪問した際の車両借上げ等の事務経費,(4)在外公館長赴任の際等の贈呈品購入経費,(5)文化啓発用の日本画等購入経費)に係る文書以外の情報収集に対する対価として使用された報償費及び二国間の外交交渉等を進めるに当たり協力の対価として使用された報償費に係る文書に記載された情報が,行政機関の保有する情報の公開に関する法律5条3号所定のが不開示情報(国の安全等に関する情報)及び同条6号所定の不開示情報(事務事業情報)に該当するとされた事例
3 2か国の在外日本国大使館及び1か国の在外日本国総領事館における「報償費」の支出に関する文書のうち,定例的に必要とされた物品の購入や役務の経費として使用されたもの((1)大規模レセプション経費,(2)酒類購入に係る経費,(3)本邦関係者が外国訪問した際の車両借上げ等の事務経費,(4)在外公館長赴任の際等の贈呈品購入経費,(5)文化啓発用の日本画等購入経費)に係る文書以外の会合の経費として使用された報償費に係る文書で,情報収集等又は二国間若しくは多国間の交渉の相手方と直接接触した会合の経費に係る決裁書に記載された情報が,行政機関の保有する情報の公開に関する法律5条3号所定の不開示情報(国の安全等に関する情報)及び同条6号所定の不開示情報(事務事業情報)に該当するとされた事例
4 2か国の在外日本国大使館及び1か国の在外日本国総領事館における「報償費」の支出に関する文書のうち,定例的に必要とされた物品の購入や役務の経費として使用されたもの((1)大規模レセプション経費,(2)酒類購入に係る経費,(3)本邦関係者が外国訪問した際の車両借上げ等の事務経費,(4)在外公館長赴任の際等の贈呈品購入経費,(5)文化啓発用の日本画等購入経費)に係る文書以外の会合の経費として使用された報償費に係る文書で,情報収集等又は二国間若しくは多国間の交渉そのものではなく,その交渉の準備として,あるいはその交渉結果を踏まえた対応の検討のため,国会議員,政府関係者等が,外交交渉の事前又は事後に,我が国の大使館員ないし総領事館員と行う会合の経費に係る文書(ただし,「請求書」及び支払先又は支払予定先関係者が独自に作成した「領収書」を除く。)に記載された情報のうち,「文書作成者名」,「決裁者名」,「起案・決済日」,「支払手続日」,「取扱者名」,「支払額」,「支払予定額」及び「目的・内容」の部分は,行政機関の保有する情報の公開に関する法律5条3号所定の不開示情報(国の安全等に関する情報)及び同条6号所定の不開示情報(事務事業情報)に該当せず,前記情報のうち,「支払先」及び「支払予定先」の部分は,同条5号及び6号所定の不開示情報に該当するとされた事例
5 2か国の在外日本国大使館及び1か国の在外日本国総領事館における「報償費」の支出に関する文書のうち,定例的に必要とされた物品の購入や役務の経費として使用されたもの((1)大規模レセプション経費,(2)酒類購入に係る経費,(3)本邦関係者が外国訪問した際の車両借上げ等の事務経費,(4)在外公館長赴任の際等の贈呈品購入経費,(5)文化啓発用の日本画等購入経費)に係る文書以外の会合の経費として使用された報償費に係る文書で,情報収集等又は二国間若しくは多国間の交渉そのものではなく,その交渉の準備として,あるいはその交渉結果を踏まえた対応の検討のため,国会議員,政府関係者等が,外交交渉の事前又は事後に,我が国の大使館員ないし総領事館員と行う会合の経費に係る「請求書」及び「領収書」(ただし,担当部局の職員が立替払をした場合に内部的に作成される書面を除く。)が,行政機関の保有する情報の公開に関する法律5条3号所定の不開示情報(国の安全等に関する情報)及び同条6号所定の不開示情報(事務事業情報)に該当するとされた事例
6 2か国の在外日本国大使館及び1か国の在外日本国総領事館における「報償費」の支出に関する文書のうち,定例的に必要とされた物品の購入や役務の経費として使用されたもの((1)大規模レセプション経費,(2)酒類購入に係る経費,(3)本邦関係者が外国訪問した際の車両借上げ等の事務経費,(4)在外公館長赴任の際等の贈呈品購入経費,(5)文化啓発用の日本画等購入経費)に係る文書以外の会合の経費として使用された報償費に係る文書で,情報収集等又は二国間若しくは多国間の交渉そのものではなく,その交渉の準備として,あるいはその交渉結果を踏まえた対応の検討のため,国会議員,政府関係者等が,外交交渉の事前又は事後に,我が国の大使館員ないし総領事館員と行う会合等の準備のための事務経費に係る文書に記録された情報のうち,「支払先」及び「支払予定先」の部分並びに「請求書」及び支払先又は支払先関係者が独自に作成した「領収書」に記載された情報は,行政機関の保有する情報の公開に関する法律5条3号所定の不開示情報(国の安全等に関する情報)及び同条6号所定の不開示情報(事務事業情報)に該当し,前記部分等を除く情報は同法5条3号及び同条6号所定の不開示情報に該当しないとした事例
7 2か国の在外日本国大使館及び1か国の在外日本国総領事館における「報償費」の支出に関する大規模レセプション経費及び酒類購入に係る経費に関する各情報が,行政機関の保有する情報の公開に関する法律5条3号所定の不開示情報(国の安全等に関する情報)及び同条6号所定の不開示情報(事務事業情報)に該当するとされた事例
8 2か国の在外日本国大使館及び1か国の在外日本国総領事館における「報償費」の支出に関する文書のうち,本邦関係者が外国訪問した際の車両借上げ等の事務経費に係る文書のうち,車両等の調達先の関係者が独自に作成した「請求書」及び「領収書」並びにその他の文書における「目的・内容」の一部及び「支払先」の全部に記載された情報が,行政機関の保有する情報の公開に関する法律5条3号所定の不開示情報(国の安全等に関する情報)及び同条6号所定の不開示情報(事務事業情報)に該当するとされた事例

裁判要旨

 1 行政機関の保有する情報の公開に関する法律5条3号が定める情報の開示・不開示の判断には,その性質上,専門的,技術的な情報と経験に基づく判断を必要とし,高度な政策的判断を伴うものであるから,裁判所としては,行政文書不開示決定取消訴訟における同号該当性の有無の判断に際しては,行政庁の判断に社会通念上著しく妥当性を欠くなどの裁量権の逸脱ないし濫用があると認められるかどうかを判断するという審査方法によるべきであって,国が,開示請求対象となっている行政文書に記録されている「情報」を公にすることにより,国の安全が害されるおそれ,他国もしくは国際機関との信頼関係が損なわれるおそれ又は他国もしくは国際機関との交渉上不利益を被るおそれがあると相当な理由をもって認めたことを主張立証した場合には,請求者において,行政機関の前記判断に裁量権の逸脱又は濫用があったことを基礎づける事実を主張立証する責任を負う。
2 2か国の在外日本国大使館及び1か国の在外日本国総領事館における「報償費」の支出に関する文書のうち,定例的に必要とされた物品の購入や役務の経費として使用されたもの((1)大規模レセプション経費,(2)酒類購入に係る経費,(3)本邦関係者が外国訪問した際の車両借上げ等の事務経費,(4)在外公館長赴任の際等の贈呈品購入経費,(5)文化啓発用の日本画等購入経費)に係る文書以外の情報収集に対する対価として使用された報償費及び二国間の外交交渉等を進めるに当たり協力の対価として使用された報償費に係る文書に記載された情報につき,外交を的確に実施する上では,相手国の利害関心,意図,状況,境遇,弱点等について,幅広く情報を収集した上で分析することが必要であり,また外交目的を達成する上では,公式の外交交渉以外に,相手国関係者等との非公式の接触,意見交換,働きかけ等の活動を行うことが重要であり,情報提供者や外交工作等の協力者に対して,協力に対する対価を支払うことが行われているものと考えられるところ,このような情報提供や外交工作等への協力は,公にされないことを前提として行われるものと考えられ,仮に前記情報が一部でも公開された場合には,情報提供者や協力者の我が国政府に対する信頼は失われ,以後,同様の情報提供や外交工作等への協力に積極的に応じなくなるおそれが生ずることが容易に想像され,前記情報を公にすると,我が国の外交事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるとして,前記情報は,行政機関の保有する情報の公開に関する法律5条3号所定の不開示情報(国の安全等に関する情報)及び同条6号所定の不開示情報(事務事業情報)に該当するとした事例
3 2か国の在外日本国大使館及び1か国の在外日本国総領事館における「報償費」の支出に関する文書のうち,定例的に必要とされた物品の購入や役務の経費として使用されたもの((1)大規模レセプション経費,(2)酒類購入に係る経費,(3)本邦関係者が外国訪問した際の車両借上げ等の事務経費,(4)在外公館長赴任の際等の贈呈品購入経費,(5)文化啓発用の日本画等購入経費)に係る文書以外の会合の経費として使用された報償費に係る文書で,情報収集等又は二国間若しくは多国間の交渉の相手方と直接接触した会合の経費に係る決裁書に記載された情報につき,情報提供者又は外交工作等の協力者は,自らが情報提供又は外交工作等への協力を行っていることのみならず,情報提供又は外交工作等への協力の相手方と接触したこと自体が公にされないことを前提として,このような情報提供又は協力を行うものと考えられ,仮に,前記情報が一部でも公開された場合には,情報提供者や協力者の我が国政府に対する信頼は失われ,以後,情報提供や外交工作等への協力に積極的に応じなくなるおそれ等が生じ,前記情報を公にすると,我が国の外交事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあり,他国との信頼関係が損なわれるおそれ及び他国との交渉上不利益を被るおそれがあるとして,前記情報は,行政機関の保有する情報の公開に関する法律5条3号所定の不開示情報(国の安全等に関する情報)及び同条6号所定の不開示情報(事務事業情報)に該当するとした事例
4 2か国の在外日本国大使館及び1か国の在外日本国総領事館における「報償費」の支出に関する文書のうち,定例的に必要とされた物品の購入や役務の経費として使用されたもの((1)大規模レセプション経費,(2)酒類購入に係る経費,(3)本邦関係者が外国訪問した際の車両借上げ等の事務経費,(4)在外公館長赴任の際等の贈呈品購入経費,(5)文化啓発用の日本画等購入経費)に係る文書以外の会合の経費として使用された報償費に係る文書で,情報収集等又は二国間若しくは多国間の交渉そのものではなく,その交渉の準備として,あるいはその交渉結果を踏まえた対応の検討のため,国会議員,政府関係者等が,外交交渉の事前又は事後に,我が国の大使館員ないし総領事館員と行う会合の経費に係る文書(ただし,「請求書」及び支払先又は支払予定先関係者が独自に作成した「領収書」を除く。)に記載された情報のうち,「文書作成者名」,「決裁者名」,「起案・決済日」,「支払手続日」,「取扱者名」,「支払額」,「支払予定額」及び「目的・内容」の部分については,前記会合は,公費支出についての一層の厳格化,適正化の観点から現在では行っていないため,過去におけるこの種の情報が公になることによって生ずる弊害は,極めて漠然としたものにすぎないとして,行政機関の保有する情報の公開に関する法律5条3号所定の不開示情報(国の安全等に関する情報)及び同条6号所定の不開示情報(事務事業情報)に該当せず,前記情報のうち,「支払先」及び「支払予定先」の部分については,同部分の情報が明らかになった場合には,我が国関係者が好んで利用している場所が,相手国関係者の知るところとなり,今後,我が国関係者の安全確保が困難になったり,我が国が情報収集等を行うに際し,当該場所に対する監視,盗聴等の妨害工作が行われることにより,外交事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるということができるから,同条3号及び6号所定の不開示情報に該当するとした事例
5 2か国の在外日本国大使館及び1か国の在外日本国総領事館における「報償費」の支出に関する文書のうち,定例的に必要とされた物品の購入や役務の経費として使用されたもの((1)大規模レセプション経費,(2)酒類購入に係る経費,(3)本邦関係者が外国訪問した際の車両借上げ等の事務経費,(4)在外公館長赴任の際等の贈呈品購入経費,(5)文化啓発用の日本画等購入経費)に係る文書以外の会合の経費として使用された報償費に係る文書で,情報収集等又は二国間若しくは多国間の交渉そのものではなく,その交渉の準備として,あるいはその交渉結果を踏まえた対応の検討のため,国会議員,政府関係者等が,外交交渉の事前又は事後に,我が国の大使館員ないし総領事館員と行う会合の経費に係る「請求書」及び「領収書」(ただし,担当部局の職員が立替払をした場合に内部的に作成される書面を除く。)につき,支払先又は支払予定先関係者が独自に作成したものであり,その紙片の大きさ,書式,文字の特徴等の様式から,支払先又は支払予定先が推測されるおそれがあるから,前記文書に記録された情報が明らかになった場合には,我が国関係者が好んで利用している場所が相手国関係者の知るところとなり,今後,我が国関係者の安全確保が困難になったり,我が国が情報収集等を行うに際し,当該場所に対する監視,盗聴等の妨害工作が行われることにより,外交事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるということができるとして,前記情報が,行政機関の保有する情報の公開に関する法律5条3号所定の不開示情報(国の安全等に関する情報)及び同条6号所定の不開示情報(事務事業情報)に該当するとした事例
6 2か国の在外日本国大使館及び1か国の在外日本国総領事館における「報償費」の支出に関する文書のうち,定例的に必要とされた物品の購入や役務の経費として使用されたもの((1)大規模レセプション経費,(2)酒類購入に係る経費,(3)本邦関係者が外国訪問した際の車両借上げ等の事務経費,(4)在外公館長赴任の際等の贈呈品購入経費,(5)文化啓発用の日本画等購入経費)に係る文書以外の会合の経費として使用された報償費に係る文書で,情報収集等又は二国間若しくは多国間の交渉そのものではなく,その交渉の準備として,あるいはその交渉結果を踏まえた対応の検討のため,国会議員,政府関係者等が,外交交渉の事前又は事後に,我が国の大使館員ないし総領事館員と行う会合等の準備のための事務経費に係る文書に記録された情報のうち,「支払先」及び「支払予定先」の部分並びに「請求書」及び支払先又は支払先関係者が独自に作成した「領収書」に記載された情報につき,「支払先」及び「支払予定先」の部分には,経費の支出に係る調達先の名称,経費の支出に係る物品等の調達先である専門業者を特定し得る情報が記載されているものと認められ,また,「請求書」及び支払先又は支払予定先関係者が独自に作成した「領収書」についても,その様式から支払先又は支払予定先が推測されるおそれがあるところ,仮にこれらが公になった場合には,当該専門業者に働きかけてこれを利用し,在外公館に侵入するなどの行動に出ることが予想され,在外公館の安全確保が困難となり,我が国の国益を著しく害するおそれが生ずるものといえ,さらに,前記事態の発生を危惧して事務経費の支出を差し控えることにより,情報収集及び外交工作等の活動の遂行に支障を及ぼすおそれが生じることも考えられるとして,前記部分等の情報については,行政機関の保有する情報の公開に関する法律5条3号所定の不開示情報(国の安全等に関する情報)及び同条6号所定の不開示情報(事務事業情報)に該当し,前記部分等を除く情報については,これが明らかになったとしても前記のような弊害が生ずるとはいえないとして,同条3号及び6号所定の不開示情報に該当しないとした事例
7 2か国の在外日本国大使館及び1か国の在外日本国総領事館における「報償費」の支出に関する大規模レセプション経費及び酒類購入に係る経費に関する各情報につき,料理等の調達先が明らかになると,我が国の内部情報を入手しようとする者や情報収集及び外交工作を行うための会合への出席関係者に対して危害を加えようとする者が,当該専門業者に働きかけてこれを利用し,在外公館に侵入するなどの行動に出ることが予想され,その結果,在外公館の安全確保が困難となり,また,我が国の国益を著しく害するおそれ等が生ずるものと認められ,これを公にすると,我が国の外交事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあり,また,我が国の安全が害されるおそれ,他国との信頼関係が損なわれるおそれ及び他国との交渉上不利益を被るおそれがあるして,行政機関の保有する情報の公開に関する法律5条3号所定の不開示情報(国の安全等に関する情報)及び同条6号所定の不開示情報(事務事業情報)に該当するとされた事例
8 2か国の在外日本国大使館及び1か国の在外日本国総領事館における「報償費」の支出に関する文書のうち,本邦関係者が外国訪問した際の車両借上げ等の事務経費に係る文書のうち,車両等の調達先の関係者が独自に作成した「請求書」及び「領収書」並びにその他の文書における「目的・内容」の一部及び「支払先」の全部に記載された情報につき,前記情報が公開されると,車両の借上げ等の調達先又はこれを推知し得る情報が明らかになるところ,我が国の内部情報を入手しようとする者や情報収集及び外交工作を行うための会合への出席関係者に対して危害を加えようとする者が,当該専門業者に働きかけてこれを利用し,その結果,在外公館の安全確保が困難となり,また,我が国の国益を著しく害するおそれが生ずるものと認められ,これを公にすると,我が国の外交事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるとして,行政機関の保有する情報の公開に関する法律5条3号所定の不開示情報(国の安全等に関する情報)及び同条6号所定の不開示情報(事務事業情報)に該当するとした事例

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