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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成16(行ウ)40

事件名

 太田市恩賞随意契約損害賠償住民訴訟事件

裁判年月日

 平成20年7月2日

裁判所名

 前橋地方裁判所

分野

 行政

判示事項

 市の住民が,市の優良工事を施行した請負人を表彰し,恩賞として随意契約の締結権を付与する制度に基づく複数の随意契約の締結ないしこれに基づく公金の支出が違法であるとして,地方自治法242条の2第1項第4号に基づき,市長個人に損害賠償の請求をすることを市長に対して求める請求が,一部認容された事例

裁判要旨

 市の住民が,市の優良工事を施行した請負人を表彰し,恩賞として随意契約の締結権を付与する制度に基づく複数の随意契約の締結ないしこれに基づく公金の支出が違法であるとして,地方自治法242条の2第1項第4号に基づき,市長個人に損害賠償の請求をすることを市長に対して求める請求につき,前記制度は,通常の競争入札案件を落札した業者のうち,工事の検査評点が良かった業者に対して随意契約の締結権を付与することによって,随意契約の締結権の付与を受けたいと考える業者に対し,工事の品質の向上を促すインセンティブを付与し,市の工事案件全体における工事品質の向上を図るものであると認められ,このような制度の趣旨ないし目的からすれば,前記制度は,個々の契約における随意契約の締結の必要性を離れた一般的抽象的な政策的目的を達成するための制度というべきであり,地方自治法施行令167条の2第1項2号にいう「その性質または目的が競争入札に適しない」との要件を根拠づけるものではないから,前記各契約が適法であるためには,個々の契約ごとに同条各号に該当することが必要であるところ,一部の契約については,同条各号に該当せず違法であるとした上,地方自治法234条3項は,競争入札においては,予定価格以下の落札価格で契約が締結されることを予定しているものと解するべきであるから,競争入札により形成されたであろう落札価格が競争を通して得られた公正な価格であるというべきであり,契約価格が仮に同契約を競争入札に付していた場合に競争により形成されたであろう落札価格(想定落札価格)を上回る場合に損害の発生が認められるところ,前記違法な契約のほぼ全てにおいて全入札案件の平均落札率により算定した想定落札価格が契約価格を下回っていることから,損害の発生が認められ,さらに,,競争入札においては実際の落札価格が多種多様な要因に基づいて形成され,市が受けた損害額を立証することは極めて困難であるから,民事訴訟法248条を適用し,前記恩賞随意契約制度の運用の実態,前記随意契約の予定価格及び契約価格等の一切の事情を総合考慮すると,前記恩賞随意契約制度により市は,契約価格の3パーセントの損害を受けたものと認めるのが相当であるとして,前記請求を一部認容した事例

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