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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成19(行ウ)80等

事件名

 (甲,乙事件)開発許可処分差止等請求事件,(丙事件)開発許可処分差止請求事件

裁判年月日

 平成20年8月7日

裁判所名

 大阪地方裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 都市計画法29条1項に基づく開発許可処分の差止めを求める訴えにつき,開発区域から約5メートル離れ,同区域の接面道路から約4メートル高い位置に居住する者及び同区域の西側及び南側に隣接する土地に居住する者らの原告適格が,否定された事例
2 都市計画法29条1項に基づく開発許可処分の差止めを求める訴えにつき,開発区域の接面道路から4メートルないし6メートル高い位置に居住する者らの原告適格が,否定された事例
3 道路法47条4項及び車両制限令12条に基づく特殊車両通行認定処分の差止めを求める訴えにつき,同処分の認定の対象となった道路周辺に居住する者らの原告適格が,否定された事例

裁判要旨

 1 都市計画法29条1項に基づく開発許可処分の差止めを求める訴えにつき,同法33条1項7号は,崖崩れ等のおそれのない良好な都市環境の保持,形成を図るとともに,崖崩れ等による被害が直接的に及ぶことが想定される開発区域内外の一定範囲の地域の住民の生命,身体の安全等を,個々人の個別的利益としても保護すべきものとする趣旨を含むと解されるから,開発区域内の土地が同号にいう崖崩れのおそれが多い土地等に当たる場合には,崖崩れ等による直接的な被害を受けることが予想される範囲の地域に居住する者は,開発許可の差止めを求めるにつき法律上の利益を有する者として,原告適格を有すると解するのが相当であり,それが本案前の訴訟要件に係るものであることに照らせば,その被害を受ける蓋然性があれば足りるとした上,前記開発区域は,前記道路に隣接する東側部分の斜面において最大約9メートルの高低差がある急斜面であること,同斜面における切土の高さも約3メートルから5メートルであることからすれば,同斜面は崖崩れの危険があり得る場所といえるが,開発区域から約5メートル離れ,同区域の接面道路から約4メートル高い位置に居住する者及び同区域の西側及び南側に隣接する土地に居住する者らについて,同人らの居住場所,居住場所に近接する斜面の高低差及び居住場所と前記開発区域との高低差等に照らして,崖崩れ等による直接的な被害を受けることが予想される範囲の地域に居住する者とはいえないとして,前記の者らの原告適格を否定した事例
2 都市計画法29条1項に基づく開発許可処分の差止めを求める訴えにつき,同法33条1項3号は,溢水等のおそれのない良好な都市環境の維持,形成を図るとともに,溢水等による被害が直接的に及ぶことが想定される開発区域内外の一定範囲の地域の住民の生命,身体の安全等を個々人の個別的利益として保護すべきものとする趣旨を含むものと解されるから,開発区域における溢水等による直接的な被害を受けることが予想される範囲の地域に居住する者は,開発許可の差止めを求めるにつき法律上の利益を有する者として,原告適格を有すると解するのが相当であり,それが本案前の訴訟要件に係るものであることに照らせば,その被害を受ける蓋然性があれば足りるとした上,開発区域の接面道路から4メートルないし6メートル高い位置に居住する者らについて,同人らは,前記開発区域の周辺地域のうち比較的上方の土地に居住しており,同区域周辺より下方に位置する地区において家屋浸水等が生じた場合でも,同区域周辺部分は家屋浸水等が生じていないから,溢水等による直接的な被害を受けることが予想される範囲の地域に居住する者とはいえないとして,前記の者らの原告適格を否定した事例
3 道路法47条4項及び車両制限令12条に基づく特殊車両通行認定処分の差止めを求める訴えにつき,同条は,公益的観点から通行車両についての調整を図り,もって,道路の構造を保全し,交通の危険を防止しようとしたものと解すべきところ,道路管理者は,前記認定をする際,同令5条から7条までに規定する車両についての制限に関する基準に適合しないことが,車両の構造又は車両に積載する貨物が特殊であるためやむを得ないものであるかどうか判断するにとどまり,当該道路の周辺の居住者の利益を考慮することは予定されておらず,同令及び関係法令上,そのような規定もないことからすれば,前記法令の規定が保護しようとしているのは,一般に道路を利用する国民ないし地域住民が共通して持つ抽象的,一般的な利益であり,これらの規定から当該道路の周辺の居住者等の利益が個別的に保護されているとは解することができないとして,前記処分の認定の対象となった道路周辺に居住する者らの原告適格を否定した事例

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