裁判例結果詳細
行政事件 裁判例集
- 事件番号
平成20(行ウ)28
- 事件名
在留特別許可の義務付け等請求事件
- 裁判年月日
平成20年8月22日
- 裁判所名
東京地方裁判所
- 分野
行政
- 判示事項
1 地方入国管理局長がした出入国管理及び難民認定法49条1項に基づく異議の申出には理由がない旨の裁決後に新たな事情が生じたことを理由に前記裁決の撤回の義務付けを求める請求が,棄却された事例
2 地方入国管理局長がした出入国管理及び難民認定法49条1項に基づく異議の申出は理由がない旨の裁決後に新たな事情が生じたことを理由に,在留特別許可の義務付けを求める訴えが,却下された事例
- 裁判要旨
1 地方入国管理局長がした出入国管理及び難民認定法49条1項に基づく異議の申出には理由がない旨の裁決後に新たな事情が生じたことを理由に前記裁決の撤回の義務付けを求める請求につき,一般に,行政処分について処分後の事情変更を理由としてする処分の撤回は,専ら公益上の必要性がある場合に,処分をした行政庁が職権によりすることが認められるにすぎないところ,処分後の事情変更を理由として前記裁決の撤回をすべきことを定める規定又は撤回を求めることができる旨の規定がない以上,関係者の撤回を求める申請権は認められないから,前記義務付けを求める訴えはいわゆる非申請型の義務付けの訴え(行政事件訴訟法3条6項1号,37条の2)であるとした上で,在留特別許可をするか否か,すなわち前記裁決をするか否かの判断は,法務大臣又は法務大臣から権限の委任を受けた地方入国管理局長(以下「法務大臣等」という。)の極めて広範な裁量にゆだねられており,前記裁決の撤回の法的性質を考慮すると,同裁決を撤回するか否かの判断も,法務大臣等の極めて広範な裁量にゆだねられていると解すべきであるから,同裁決の撤回の義務付けの訴えが認められるためには,法務大臣等がした同裁決を撤回するほどの公益上の必要性がないという判断が,その裁量権の範囲の逸脱又は濫用となると認められることを要するところ,前記裁決後に日本人女性との婚姻の届出をしたこと及び同人が妊娠したことをもって,前記地方入国管理局長が前記裁決を撤回しないことが裁量権の範囲を逸脱し,又は濫用するものであるということはできず,また,前記裁決を撤回しないことが他の事案との比較において憲法の規定する平等原則に違反するものということはできないなどとして,前記請求を棄却した事例
2 地方入国管理局長がした出入国管理及び難民認定法49条1項に基づく異議の申出には理由がない旨の裁決後に新たな事情が生じたことを理由に,在留特別許可の義務付けを求める訴えにつき,法務大臣又は法務大臣から権限の委任を受けた地方入国管理局長が,前記裁決後に生じた新たな事情を考慮して,在留特別許可をすることを認めた法令の規定は存在せず,また,他にこのような権限を認めるべき根拠も存在しないから,同裁決後に生じた新たな事情を主張して,在留特別許可を求めるためには,難民認定手続による場合でない限り,その前提として,同裁決の効力が失われている必要があるというべきであり,同裁決の効力が存続しているにもかかわらず,在留特別許可を求めることは,行政庁に法的権限のない処分を求めることにほかならないから,そのような在留特別許可の義務付けの訴えは不適法であるとした上,前記地方入国管理局長が前記裁決を撤回しないことは適法であり,前記裁決の効力が失われているということはできないとして,前記訴えを却下した事例
- 全文