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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成19(行コ)33

事件名

 指揮監督権行使等請求控訴事件(原審 東京地方裁判所平成18年(行ウ)第256号)

裁判年月日

 平成19年7月26日

裁判所名

 東京高等裁判所

分野

 行政

判示事項

 社会保険庁及び厚生労働省の違法又は不適切な支出により,年金資金及び国庫に多額の損害を与え,年金給付の基礎を脅かしたとして,年金受給資格者の地位にある者らが提起した,内閣総理大臣が社会保険庁及び厚生労働省に対して内閣法6条又は憲法72条に基づく指揮監督権を行使することを求める義務付けの訴え,同指揮監督権を行使する義務のあることの確認を求める訴え及び同指揮監督権を行使しないことの違法確認を求める訴えが,いずれも不適法であるとされた事例

裁判要旨

 社会保険庁及び厚生労働省の違法又は不適切な支出により年金資金及び国庫に多額の損害を与え,年金給付の基礎を脅かしたとして,年金受給資格者の地位にある者らが提起した,内閣総理大臣が社会保険庁及び厚生労働省に対して内閣法6条又は憲法72条に基づく指揮監督権を行使することを求める義務付けの訴え,同指揮監督権を行使する義務のあることの確認を求める訴え及び同指揮監督権を行使しないことの違法確認を求める訴えにつき,内閣総理大臣が行政各部に指揮監督権を行使するためには,閣議にかけて決定した方針が存在することを要するところ,閣議にかけて決定した方針が存在する場合においても,内閣総理大臣は,各省庁の長を媒介することなく,直接に当該省庁に対し特定ないし個別的な行政事務の実施を命ずることはできないため,その指揮監督権に当該方針を実現するための強制力を伴うものではなく,他方,閣議にかけて決定した方針が存在しない場合においては,内閣総理大臣は,行政各部に対し随時その所掌事務について一定の方向で処理するよう指導,助言等の指示を与える権限を有しており,内閣総理大臣の指揮監督権にはこのような権限が含まれると解するのが相当であるが,この権限についても強制力を伴うものではないとした上,前記違法又は不適切な支出について,内閣総理大臣の上記指揮監督権が行使されたとしても,それによって年金受給資格者の地位にある者らの具体的な権利義務に直接影響が及ぶということはできないから,前記各訴えは,裁判所法3条1項にいう「法律上の争訟」には当たらず,前記各訴えはいずれも不適法であるとして却下した事例

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