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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成17(行ウ)3等

事件名

 損害賠償請求事件(住民訴訟)(甲事件,乙事件,丙事件),不当利得金返還請求事件(住民訴訟)(丁事件)

裁判年月日

 平成20年10月31日

裁判所名

 大阪地方裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 市の教育委員会に所属する非常勤職員らに対する,6月期,12月期の特別報酬(いわゆるボーナス)並びに退職時の特別報酬(いわゆる退職手当)の各支給が違法であるとして,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,市長個人らに損害賠償請求することを市長に対して求める訴えにおいて,監査委員の監査の結果通知があった日から30日を経過した後にされた教育員会管理部長を当該職員に加える旨の訴えの変更が,出訴期間との関係で適法とされた事例
2 市の市長部局及び教育委員会所属の非常勤職員らに対する,6月期,12月期の特別報酬(いわゆるボーナス)並びに退職時の特別報酬(いわゆる退職手当)の各支給が違法であるとして,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,当該行為に係る相手方に不当利得返還請求をすることを市長に対して求める訴えにおいて,当該相手方がその氏名等で特定表示されていない場合でも,これを氏名等以外の方法で客観的に特定することができるときは,当該訴えは適法であるとした事例
3 市の市長部局及び教育委員会所属の非常勤職員らに対する,6月期,12月期の特別報酬(いわゆるボーナス)及び退職時の特別報酬(いわゆる退職手当)の各支給が違法であるとして,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,当該職員に損害賠償請求をすること及び当該行為に係る相手方に不当利得返還請求をすることを市長に対して求める各請求が,いずれも一部認容された事例

裁判要旨

 1 市の教育委員会に所属する非常勤職員らに対する,6月期,12月期の特別報酬(いわゆるボーナス)並びに退職時の特別報酬(いわゆる退職手当)の各支給が違法であるとして,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,市長個人らに損害賠償請求することを市長に対して求める訴えにおいて,監査委員の監査の結果通知があった日から30日を経過した後にされた教育員会管理部長を当該職員に加える旨の訴えの変更につき,同一の公金支出を対象とする住民訴訟を出訴期間内に提起していること,前記訴えの変更は,訴訟において前記特別報酬の支給については前記教育委員会管理部長が専決権限を有するとの市側の主張を受けてされたものであること,当該職員に対する訴えを提起しようとする住民において,その適否が問題とされている財務会計上の行為につき,どの職員が権限を有し,また,だれが実際に専決するなどの財務会計上の行為をしたのかを判定することが必ずしも容易でないことを併せ考えると,前記訴えの変更後の請求は,当初の訴えの提起の時に提起されたものと同視し,地方自治法242条の2第2項の出訴期間の遵守において欠けるところはないと解すべき特段の事情があるとして,前記訴えの変更は,適法であるとした事例
2 市の市長部局及び教育委員会所属の非常勤職員らに対する,6月期,12月期の特別報酬(いわゆるボーナス)並びに退職時の特別報酬(いわゆる退職手当)の各支給が違法であるとして,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,当該行為に係る相手方に不当利得返還請求をすることを市長に対して求める訴えにつき,同号に基づく請求においては,通常,当該職員又は相手方をその氏名及び住所を表示することにより特定することを要すると解されるが,普通地方公共団体の住民においていわゆる情報公開条例に基づく情報公開請求を行うことなども含めて相当の注意力をもって調査を尽くしても前記当該職員又は相手方をその氏名等により特定できない場合にまで常に前記当該職員又は相手方をその氏名等で特定表示することを要するものと解すると,当該職員又は相手方に対する損害賠償又は不当利得返還の請求をすることを求める訴訟を提起するみちが封じられる場面も生じ得ることとなり妥当とはいい難いことなどから,当該職員又は相手方がその氏名等で特定表示されていない場合であっても,これを氏名等以外の方法で客観的に特定することができるときは,当該訴えは請求の特定に欠けるところがないと解するのが相当であるとした上,訴状には相手方が一般職非常勤職員22名であること及びこれらの者に対する特別報酬の支給総額が記載されており,当該年度に特別報酬を受けた一般職非常勤職員は22名のみで,特別報酬の支給総額についても当事者間で争いがないことから,訴状の記載に基づいて請求の相手方を客観的に特定できるとして,前記訴えを適法とした事例
3 市の市長部局及び教育委員会所属の非常勤職員らに対する,6月期,12月期の特別報酬(いわゆるボーナス)及び退職時の特別報酬(いわゆる退職手当)の各支給が違法であるとして,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,当該職員に損害賠償請求をすること及び当該行為に係る相手方に不当利得返還請求をすることを市長に対して求める各請求につき,市の給与条例の特別報酬に関する規定は,その額の算定の基礎とされた月額報酬に関してその上限額のみを規定するものであって,当該給与条例の関係規定から個々の非常勤職員に対する月額報酬の額を決定するための具体的基準を読み取ることもできない上,当該月額報酬額に乗じるべき基準日ごとの支給率及び在職期間の区分に応じた割合の具体的定めを規則にゆだねているなど,およそ個々の非常勤職員に対する特別報酬の額を決定するに当たっての具体的な基準についての定めを欠いているから,給与条例主義を定めた地方自治法204条3項,204条の2,地方公務員法25条1項等の趣旨を没却するものであって,前記各規定に反し,違法といわざるを得ないとした上で,前記特別報酬の各支出決定は,条例の根拠を欠き違法であるとして,前記各請求をいずれも一部認容した事例

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