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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成18(行コ)16

事件名

 三菱元徴用工・被爆者健康手帳申請却下処分取消等請求控訴事件(原審・広島地方裁判所平成17年(行ウ)第6号)

裁判年月日

 平成20年9月2日

裁判所名

 広島高等裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 日本国外に居住する者が原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律に基づいてした被爆者健康手帳の交付申請に対し,知事がした同申請の却下処分の取消訴訟が,前記申請者の死亡によって終了したとされた事例
2 厚生労働大臣等が原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律に基づく健康管理手当認定申請を海外から可能とする措置を講じなかったこと等が違法であるとして,日本国外に居住する者が国に対してした国家賠償請求が,棄却された事例

裁判要旨

 1 日本国外に居住する者が原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律に基づいてした被爆者健康手帳の交付申請に対し,知事がした同申請の却下処分の取消訴訟につき,同法に基づく各種援護を受けるためには,前記手帳の交付を受けることによって同法1条にいう「被爆者」の地位を取得することが必要であり,被爆者健康手帳交付申請自体には何らの法律効果も伴わず,前記申請者は既に被爆者健康手帳の交付を受けていることからすると,前記申請者には前記処分の取消しを求める法律上の利益は存在しないから,これが実体法上承継されるということも考え難いとして,前記取消訴訟は,前記申請者の死亡によって終了するとした事例
2 厚生労働大臣等が原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律に基づく健康管理手当認定申請を海外から可能とする措置を講じなかったこと等が違法であるとして,日本国外に居住する者が国に対してした国家賠償請求につき,同法27条2項にいう都道府県知事とは居住又は現在する地の都道府県知事と読むことにも条文の文理解釈としては相応の理由があること,同法制定の際,衆,参議院両厚生委員会において,政府委員が,援護対象者は日本国内に居住する者に限定される旨を答弁し,同法は援護対象者について政府側からこれ以外の説明が行われることはないまま成立したこと,市長がした前記申請の却下処分時点において,国外から健康管理手当認定申請はできないとの解釈を否定した確定裁判例はなかったことからすると,前記処分時点において,厚生労働大臣等が国外から健康管理手当の認定申請を認めることはできないとの取扱いを維持していたことが,職務上通常尽くすべき注意義務を怠ったものであり,国家賠償法上違法であると評価することはできないなどとして,前記請求を棄却した事例

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