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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成19(行ウ)91

事件名

 費用返還決定処分取消請求事件

裁判年月日

 平成20年12月10日

裁判所名

 大阪地方裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 生活保護法63条を適用する旨の通知の行政処分性
2 生活保護受給者とその内縁の夫との間の子で,内縁の夫の死後に出生しその後認知判決が確定したものが,内縁の夫の交通事故死に関する遺族慰謝料及び相続した損害賠償金の各支払を受けたため,福祉事務所長が前記生活保護受給者に対してした、前記事故時以降に支給した生活保護費に関し生活保護法63条に基づく返還金の額を定める旨の処分について前記生活保護受給者がした取消請求が,認容された事例

裁判要旨

 1 生活保護法63条を適用する旨の通知の行政処分性につき,同条は保護の実施機関による返還金額の決定のみを規定し,金額の決定とは別個の返還決定ないし通知については何ら規定せず,法令上他に返還額の決定とは別個の返還決定ないし通知について定めた規定は存在しないことなどからすると,同法は,保護の実施機関が返還すべき金額を決定することによって初めて,被保護者に同法63条に基づく具体的な返還義務が生じる仕組みを採用しているものと解されるところ,金額を定めることなく単に同法63条を適用することを通知するにすぎない前記通知は,直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定する効果を有するものであるとはいえないから,取消訴訟の対象たる「処分」には該当しない。
2 生活保護受給者とその内縁の夫との間の子で,内縁の夫の死後に出生しその後認知判決が確定したものが,内縁の夫の交通事故死に関する遺族慰謝料及び相続した損害賠償金の各支払を受けたため,福祉事務所長が前記生活保護受給者に対してした、前記事故時以降に支給した生活保護費に関し生活保護法63条に基づく返還金の額を定める旨の処分について前記生活保護受給者がした取消請求につき,生活保護法4条1項にいう「利用し得る資産」とは,現実に直ちに活用し得るものである必要はないけれども,当該保護を受ける時点においてその内容が客観的に確定し得るものであることが必要であり,換言すれば,当該保護を受ける時点において,客観的に存在し,かつ,当該保護受給者に帰属していることを要し,同法63条にいう「資力」とは,同法4条1項にいう「利用し得る資産」と基本的には同義であると解されるから,ここにいう「資力」も,返還されるべき保護費にかかる保護を受給した時点において,客観的に存在し,当該保護受給者に帰属していることを要するものとした上,父親の死亡時に胎児であった子は,私権の享有主体たり得なかったのであるから,前記遺族慰謝料が客観的に存在していたとしても,前記子に帰属していたものとは認められないから,父親の死亡時に前記遺族慰謝料を「資力」として取得したということはできず,また,同子は,その出生時には,父親との間に法的父子関係は存在せず,認知判決確定までの間は,前記子は父親の相続人としての地位を有していなかったのであるから,出生後認知判決確定までの間においては,父親が事故に関し加害者に対して取得した損害賠償請求権について,何ら権利関係を有さず,この時点においては前記子にその相続分が帰属していたということはできず,前記相続分を同法4条1項にいう「利用し得る資産」ないし同法63条にいう「資力」として取得したということはできないとして,前記請求を認容した事例

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