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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成19(行ウ)141

事件名

 換地処分取消請求事件

裁判年月日

 平成21年1月30日

裁判所名

 大阪地方裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 土地区画整理法に基づく仮換地の指定後に仮換地自体に着目して締結された,当該仮換地上に建物の所有を目的とする賃借権を設定する旨の賃貸借契約の法的性質
2 土地区画整理法に基づく仮換地の指定後に当該仮換地上に建物の所有を目的とする定期借地権及び事業用定期借地権の設定を受けた者に対し,土地区画整理事業の施行者が,各借地権の価額を一律に当該借地権が設定された土地の更地価額の50パーセントと評価するなどして徴収すべき清算金の金額を定めてした換地処分が,適法とされた事例

裁判要旨

 1 土地区画整理法に基づく仮換地の指定がされると,従前の宅地の所有者は,従前の宅地については使用又は収益することができなくなり,同法103条4項の規定による換地処分の公告がされるまで,仮換地について使用又は収益をすることができるが,仮換地の指定によって従前の宅地の所有権を失うものではなく,その所有権に基づき,従前の宅地を処分することができるほか,従前の宅地について地上権その他の使用収益権を設定することもでき,その設定を受けた者は,所有者から設定を受けた当該使用収益権に基づき,仮換地について使用収益をすることができるところ,従前の宅地の所有者等が仮換地について取得する使用収益権は,同法によって特に設定,付与された暫定的,流動的な権利にすぎず,従前の宅地の所有者等は,当該仮換地そのものを処分したり地上権その他の使用収益権を設定する権限を有しないから,仮換地の指定後に従前の宅地の所有者が仮換地自体に着目して当該仮換地上に建物の所有を目的とする賃貸借契約を締結した場合,同契約については,仮換地の使用収益権そのものを目的とする賃貸借契約が締結されたものと解すべき特段の事情がない限り,従前の宅地について建物の所有を目的とする賃借権を設定する旨の契約であると解するのが相当である。
2 土地区画整理法に基づく仮換地の指定後に当該仮換地上に建物の所有を目的とする定期借地権及び事業用定期借地権の設定を受けた者に対し,土地区画整理事業の施行者が,各借地権の価額を一律に当該借地権が設定された土地の更地価額の50パーセントと評価するなどして徴収すべき清算金の金額を定めてした換地処分につき,土地区画整理法89条の定める照応の原則は,それぞれの従前の宅地と換地とが大体において同一条件であるといういわゆる縦の関係と換地相互間の公平,平等という横の関係の両方において照応していることを要求しているものと解されるところ,清算金は,前記縦の関係に対応する損失補償金の交付又は不当利得金の徴収としての機能と,前記横の関係に対応する不均衡是正の調整金としての機能を併せ有するものであるから,清算金の額の決定に係る施行者の裁量の範囲は限定されたものであり,所有権のみならず,賃借権その他の権利について清算金の額を定める場合においても当該権利の評価は適正なものでなければならないとした上,定期借地権等の内容は,その存続期間の長短,地代の額,権利金又は保証金の有無ないし多寡,当該借地の用途等の契約条件に規定される,極めて個別性が強いものであり,普通借地権のように借地権割合を基礎とした借地権価格等が取引慣行として形成されているといった状況にはないところ,前記土地区画整理事業における換地計画は,定期借地権等と普通借地権との差異及び定期借地権等の個別性,多様性を捨象し,一律に借地権割合をもってその権利の価額を評価し,これに基づいて徴収又は交付すべき清算金の金額を定めているのであって,少なくとも一般的な定期借地権等の評価方法としての合理性を欠くものであるものの,前記賃貸借契約においては,その用途はテーマパーク用施設の建設,運営用地とするものであって,存続期間を20年とする事業用借地権についても,存続期間の満了後も継続して同借地権を設定することが当初から予定されていたものと推認されることなどから,前記施行者が前記賃貸借契約に基づく定期借地権等の価額を当該借地権が設定された土地の更地価額の50パーセントと評価したことが直ちに不合理であるとはいえないとして,前記処分を適法とした事例

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