裁判例結果詳細
行政事件 裁判例集
- 事件番号
平成20(行コ)116
- 事件名
法人税更正処分取消等請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成18年(行ウ)第496号)
- 裁判年月日
平成21年2月18日
- 裁判所名
東京高等裁判所
- 分野
行政
- 判示事項
架空外注費を計上して会社の金員を詐取した従業員に対する損害賠償請求権の額を,詐取された架空外注費の額を損金に算入する事業年度と同じ事業年度の益金に算入しないでされた法人税の確定申告に対する更正処分が適法とされた事例
- 裁判要旨
架空外注費を計上して会社の金員を詐取した従業員に対する損害賠償請求権の額を,詐取された架空外注費の額を損金に算入する事業年度と同じ事業年度の益金に算入しないでされた法人税の確定申告に対する更正処分につき,不法行為による損害賠償請求権については,通常,損失が発生した時には損害賠償請求権も発生,確定しているから,これらを同時に損金と益金とに計上するのが原則であるが,税負担の公平や法的安定性の観点から,通常人を基準にして,損害賠償請求権の存在,内容等を把握し得ず,権利行使が期待できないような客観的状況にあって未だ権利実現の可能性を客観的に認識することができない場合には当該事業年度の益金に計上すべきであるとはいえず,また,損害賠償請求権が全額回収不能であることが客観的に明らかである場合には,貸倒損失としてそのような状態になった時点の属する年度の損金に算入することができるとした上,前記詐取は,経理担当取締役が預金口座からの払戻し及び外注先への振込み依頼について決裁する際に前記従業員が持参した正規の振込依頼書をチェックしさえすれば容易に発覚するものであったこと等を考えると,通常人を基準とすると,当該事業年度当時において,前記従業員に対する損害賠償請求権の存在,内容等を把握できず,権利行使を期待できないような客観的状況にあったとはいえず,また,当該事業年度当時,前記従業員に全く弁済能力がなかったとはいえず,前記損害賠償請求権が全額回収不能であることが客観的に明らかであったとはいえないから,前記損害賠償請求権の額を架空外注費を損金に算入する事業年度の損金に計上することは許されず,益金の額に算入すべきであるとして,前記更正処分を適法とした事例