裁判例結果詳細
行政事件 裁判例集
- 事件番号
平成19(行コ)109
- 事件名
損害賠償請求控訴事件(原審・大阪地方裁判所平成17年(行ウ)第96号(以下「96号事件」という。),同第97号(以下「97号事件」という。),同第98号(以下「98号事件という。))
- 裁判年月日
平成21年2月18日
- 裁判所名
大阪高等裁判所
- 分野
行政
- 判示事項
市において条例に定めのない違法な特別昇給制度の運用がされているとして,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,市長個人,市水道局長個人及び市交通局長個人らに損害賠償の請求をすることを前記市長らに対して求める請求並びに市総務局長個人らに賠償命令をすることを市長に対して求める各請求が,同人らには過失がないとして,いずれも棄却された事例
- 裁判要旨
市において条例に定めのない違法な特別昇給制度の運用がされているとして,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,市長個人,市水道局長個人及び市交通局長個人らに損害賠償の請求をすることを前記市長らに対して求める請求並びに市総務局長個人らに賠償命令をすることを市長に対して求める各請求につき,職員の給与に関する条例(昭和31年大阪市条例第29号。平成17年大阪市条例第20号による改正前)5条6号の規定する特別昇給は,国家公務員における特別昇給に準ずるものとして規定されたと解されるから,これと同様,同号も勤務成績の特に優秀な少数の職員を,給与上特に優遇することにより,成績主義を実態的に確保する趣旨で定められたものというべきであり,さらに,交通局及び水道局の企業職員を対象とする特別昇給を規定した市の規定,規則等の条項についても,それらはいずれも前記条例5条6項とほぼ同一の文言を用いているから,同項と同趣旨で定められたものと解されるとした上,前記市の部局においては,特別昇給の一つとして設けられた「定数内特別昇給」について,勤務成績が特に優秀であることという同特別昇給の要件が,良好な成績で勤務したことという普通昇給の要件と同一のものとして運用されており,その成績は勤怠のみで判断されていたこと,定数内特別昇給の定数は概ね30パーセントと比較的大きい上,特定の採用年次に該当する職員の大多数に定数内特別昇給をさせていたこと,その反面,昇給の効果月数は3月から6月と比較的小さいこと,他部局においてもほぼこれと同様の定数内特別昇給の運用をしてきたことが認められ,この運用実態に照らせば,同市における定数内特別昇給は,勤務成績の特に優秀な少数の職員を給与上特に優遇することにより,成績主義を実態的に確保するという前記条例5条6項の趣旨に反した形で実施されてきた違法なものというべきであるが,同市における本来的な給与決定権限者及び専決によりこれらの者の権限を行使することとなった者において,定数内特別昇給の対象者が勤務成績が特に優秀であるとの認定手続を経た者でないと認識していたとしても,そのことを違法であるとする具体的指摘がなかったことなどから,昭和34年から長年にわたって継続している定数内特別昇給制度につき,これが前記職員条例の趣旨に反して違法の疑いがあると認識することなく,従前の枠組みどおりに運用してしまったことに,過失を認めることはできないとして,前記各請求をいずれも棄却した事例
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