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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成20(行ウ)464

事件名

 従前資産価額増額請求事件

裁判年月日

 平成21年3月27日

裁判所名

 東京地方裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 開発利益は,都市再開発法73条1項3号の宅地の価額の算定に係る同法80条1項所定の相当の価額に含まれるか
2 都市再開発法73条1項3号の宅地の価額について,都収用委員会がした第一種市街地開発事業の施行者が権利変換計画で定めた価額を前記宅地の価額とする裁決を受けた同宅地の共有者らが,市街地再開発事業による開発利益を加算して同宅地の価額を算定すべきであるとしてした前記裁決に係る同宅地の価額の増額変更請求が,棄却された事例

裁判要旨

 1 都市再開発法73条1項3号の宅地の価額の算定に係る同法80条1項所定の相当の価額は,同項の文言及び構造によれば評価基準日における従前資産の評価額をいうものであり,同基準日における近傍類似資産の取引価格その他の諸事情を考慮して定められるべきものであること,並びに同法は,財産権の保障の見地から,市街地再開発事業によって従前資産の地権者が被る特別な犠牲の回復を図ることを目的として,補償金及び清算金並びにその算定基準に関する規定を設けているものと解され,かかる観点からは,従前資産に関する権利の喪失の前後を通じて従前資産の地権者の保有する資産の財産価値が等しくなるように補償金及び清算金の額を定めるべきであり,従前資産の地権者が近傍において従前資産と同等の代替地等を取得し得る金額を補償することを要し,かつ,それで足りるものと解されるところ,この金額は同項により評価基準日における近傍類似資産の取引価格等を考慮して定める相当の価額であることからすれば,同項所定の相当の価額に開発利益は含まれない。
2 都市再開発法73条1項3号の宅地の価額について,都収用委員会がした第一種市街地開発事業の施行者が権利変換計画で定めた価額を前記宅地の価額とする裁決を受けた同宅地の共有者らが,市街地再開発事業による開発利益を加算して同宅地の価額を算定すべきであるとしてした前記裁決に係る同宅地の価額の増額変更請求につき,開発利益は同法80条1項所定の相当の価額に含まれないところ,前記施行者において,同事業の円滑な遂行を図るため,権利変換計画における従前資産の価額の算定において開発利益を加算する取扱いとしたことにより,同法73条1項3号の宅地の価額は同法80条1項所定の相当の価額を超過するものといえるが,前記事業の円滑な遂行も同法の目的に適合することからすれば,その超過によって同法73条1項3号の宅地の価額を定めた部分が直ちに違法となるものではなく,また,前記施行者が権利変更計画の策定の過程で同法80条1項所定の評価基準と異なる取扱基準を採る旨の決議をしたとしても,このような事実上の取扱基準は,法令の根拠を欠き,同法85条1項による裁決及び同条3項による訴訟における収用委員会及び裁判所の判断を何ら拘束するものではなく,前記収用委員会が定めた価額は同項所定の相当の価額を下回らないから前記裁決は適法であるとして,前記請求を棄却した事例

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