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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成17(行ウ)68等

事件名

 個人タクシー値下げ請求却下処分取消請求事件(甲事件),一般乗用旅客自動車運送事業運賃及び料金認可申請却下処分取消等請求事件(乙事件)

裁判年月日

 平成21年9月25日

裁判所名

 大阪地方裁判所

分野

 行政

判示事項

 個人タクシー業者がした初乗運賃を値下げすることなどを内容とするタクシー事業に係る旅客の運賃及び料金の変更認可申請に対して運輸局長がした同申請を却下する旨の処分の取消し及び同申請を認可することの義務付けを求める各請求が,いずれも認容された事例

裁判要旨

 個人タクシー業者がした初乗運賃を値下げすることなどを内容とするタクシー事業に係る旅客の運賃及び料金の変更認可申請に対して運輸局長がした同申請を却下する旨の処分の取消し及び同申請を認可することの義務付けを求める各請求につき,道路運送法9条の3第2項3号にいう「他の一般旅客自動車運送事業者との間に不当な競争を引き起こすこととなるおそれがないものであること」とは,他の一般旅客自動車運送事業者との間において過労運転の常態化等により輸送の安全の確保を損なうことになるような旅客の運賃及び料金の不当な値下げ競争を引き起こす具体的なおそれをいうものと解するのが相当であり,そのようなおそれのある運賃等に該当するか否かについては,当該運賃等が能率的な経営の下における適正な原価,すなわち,個々の一般乗用旅客自動車運送事業者がその事業を運営するのに十分な能率を発揮して合理的な経営をしている場合において必要とされる原価を下回るものであるか否かという観点のほか,当該事業者の市場の中での位置付け,当該運賃等を設定した意図等を総合的に勘案して判断すべきであるところ,このような判断は,専門的,技術的な知識経験及び公益上の判断を必要とするものであるから,同号の基準に適合するか否かの判断については,国土交通大臣及びその権限の委任を受けた地方運輸局長にある程度の裁量権が認められるとした上,前記申請に係る運賃が能率的な経営の下における適正な原価を償わないものであると即断できず,前記申請者は一人一車制の個人タクシー事業者であって市場支配力はほぼゼロであり,現存する最低額運賃から初乗運賃をわずかに値下げする前記申請が認可されたとしても,過労運転の常態化等による運送の安全の確保を損なうことになるような不当な値下げ競争を引き起こす具体的おそれを裏付けるに足りるような事情は見当たらないなどとして,前記運輸局長の前記処分は,同号の基準適合性に係る判断の専門性,技術性及び公益性にかんがみてもなお,社会通念に照らし著しく妥当性を欠いたものといわざるを得ず,その裁量権の範囲を超え又はその濫用があったものとして違法であり,また,前記運輸局長が同号の要件に適合しないとして前記申請を認可しないことは,その裁量権の逸脱又は濫用になると認められるとして,前記各請求をいずれも認容した事例

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