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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成17(行ウ)330

事件名

 損害賠償(住民訴訟)請求事件

裁判年月日

 平成21年5月28日

裁判所名

 東京地方裁判所

分野

 行政

判示事項

 市が都市計画道路整備事業において,同事業地内に所在する寺院の移転地とするために買収した土地の所有者に対し,市有地を随意契約の方法で売却したことが違法,無効であるとして,地方自治法242条の2第1項3号及び4号に基づき,前記売却地の買受人に所有権移転登記の抹消登記手続請求をすることを怠っていることの違法確認,並びに元市長個人及び前記買受人に適正価額との差額相当額の損害賠償等の請求をすることを市長に対して求める請求が,いずれも棄却された事例

裁判要旨

 市が都市計画道路整備事業において,同事業地内に所在する寺院の移転地とするために買収した土地の所有者に対し,市有地を随意契約の方法で売却したことが違法,無効であるとして,地方自治法242条の2第1項3号及び4号に基づき,前記売却地の買受人に所有権移転登記の抹消登記手続請求をすることを怠っていることの違法確認,並びに元市長個人及び前記買受人に適正価額との差額相当額の損害賠償等の請求をすることを市長に対して求める請求につき,普通地方公共団体が行政上の必要からその所有に属する不動産を随意契約により売却する場合には,当該普通地方公共団体の長は,適正な財産の処分という観点に留意しつつ,合理的な範囲で裁量権を行使してその売却価格を決定する権限を有しているところ,不動産については,その価格の評価には相当の幅があるのが通例であるため,その客観的な価格を的確に把握することは必ずしも容易ではなく,また,売買契約は価格について相手方との合意に至ってはじめて成立するものであるから,行政上の必要性を踏まえ,相手方との相当の交渉を経た上,その時点における一定の合理性のある根拠に基づき,売却価格を決定して当該不動産を売却したと評価される場合には,普通地方公共団体の長においてその裁量権を逸脱し又は濫用するものではなく,違法とはいえないと解するのが相当であり,特に,当該売買契約の締結に係る行政上の必要性がある場合において,相手方との相当の交渉を経て,不動産鑑定士の評価,意見に沿って合意に至った売却価格が近接した時期の購入価格を相当程度上回るものであり,当該売却価格の額を含めて当該売買契約の締結について議会の承認の議決が得られているときは,その当時において,当該売却価格の基礎とされた不動産鑑定士の評価,意見が著しく合理性を欠き,当該売却価格による売買が著しく不当に廉価な売買に当たることが明らかであると認められるなどの特段の事情のない限り,当該売買契約の締結が裁量権の逸脱又は濫用により違法であるということはできないとした上,前記売買契約の締結に係る行政上の必要性は相当程度高いものであったところ,約4年余の長期にわたる相当の交渉を経て不動産鑑定士2名の評価,意見に沿って前記買受人との間で合意に至った前記売却地の売却価格は,約3年前の購入価格を1226万円余り上回るものであり,前記売却価格の額を含めて前記売買契約の締結について市議会の承認が得られており,その当時において,当該売却価格の基礎とされた前記不動産鑑定士2名の評価,意見が著しく合理性を欠き,前記売却価格による売買が著しく不当に廉価な売買に当たることが明らかであると認められるなどの特段の事情を認めるに足りない以上,前記売買契約の締結が元市長の裁量権の逸脱又は濫用により違法であるということはできないとして,前記請求をいずれも棄却した事例

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