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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成16(行ウ)497

事件名

 公金支出差止等(住民訴訟)請求事件

裁判年月日

 平成21年5月11日

裁判所名

 東京地方裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 特定多目的ダム法に基づくダム使用権の設定予定者たる地位と地方自治法238条1項4号又は同項7号該当性
2 東京都が設定の申請をしたダム使用権は都の水道事業に不要であり,ダムにより都が治水上の利益を受けることもない等として,地方自治法242条の2第1項1号に基づき,都水道局長に対する特定多目的ダム法7条に基づく建設費負担金の支出の差止め,都建設局総務部企画経理課長による河川法63条に基づく受益者負担金の支出命令の差止めを求める各請求が,いずれも棄却された事例

裁判要旨

 1 地方自治法238条1項4号の「地上権,地役権,鉱業権その他これらに準ずる権利」とは,法律上確立している用益物権,又は用益物権に類する性格を有する権利ということころ,ダム使用権の設定予定者たる地位は,手続上の地位にすぎないからこれに当たらず,多目的ダムの建設費の負担を出資ということもできないから,同項7号の「出資による権利」にも当たらない。
2 東京都が設定の申請をしたダム使用権は都の水道事業に不要であり,ダムにより都が治水上の利益を受けることもない等として,地方自治法242条の2第1項1号に基づき,都水道局長に対する特定多目的ダム法7条に基づく建設費負担金の支出の差止め,都建設局総務部企画経理課長による河川法63条に基づく受益者負担金の支出命令の差止めを求める各請求につき,地方公営企業は,常に企業の経済性を発揮することを経営の基本原則とし,都水道局長は,水道事業管理者として,地方公営企業の業務を執行し,当該事務の執行に関し当該地方公共団体を代表し,予算の原案の作成,決算の調整,当該企業の用に供する資産の取得,管理,処分,契約の締結,料金等の徴収など幅広い事務を担任し,地方公営企業の業務に関する契約の締結並びに財産の取得,管理及び処分については条例又は議会の議決を要しないとされていることにかんがみると,上記事務の遂行は都水道局長の合理的な裁量に委ねられているところ,都の水道需要予測や保有水源量の評価について不合理な点は認められず,前記都水道局長のダムによる水源確保が必要であるとの判断は合理的な裁量の範囲を逸脱したものとはいえないから,前記水道局長による建設費負担金の支出が違法であるとはいえず,また,受益者負担金は、河川法63条1項,同法64条1項により,国土交通大臣が都府県に負担させることができるとされているものであり,同法施行令38条1項の通知の性格は,国土交通大臣が発する具体的な費用負担の命令であると解すべきであるから,前記建設局課長は,上記通知が著しく合理性を欠き,予算執行の適正確保の見地から看過し得ない瑕疵の存する場合でない限り,上記通知を尊重しその内容に応じた財務会計上の措置を採るべき義務があり,これを拒むことは許されず,このような瑕疵が存する場合でない限り,上記通知に基づき前記建設局課長がする支出命令は,その職務上負担する財務会計法規上の義務に違反してされる違法なものということはできないと解されるところ,治水対策上ダムは必要である上,ダムの建設に関する基本計画が無効であるなどの事情があるとは認められず,前記予算執行の適正確保の見地から看過し得ない瑕疵の存する場合に当たるとはいえないから,前記建設局課長がする支出命令がその職務上負担する財務会計法規上の義務に違反してされる違法なものということはできない等として,前記各請求を,いずれも棄却した事例

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