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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成20(行コ)38

事件名

 損害賠償(住民訴訟)請求控訴事件(原審・大阪地方裁判所平成17年(行ウ)第79号,第143号)

裁判年月日

 平成21年7月23日

裁判所名

 大阪高等裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 社会福祉法人が,その設置に係る通所介護事業所につき,偽りその他不正の行為により市から介護報酬の支払を受けていたにもかかわらず,同法人に対して介護保険法22条3項に基づく加算金を市に支払うよう請求しないことが違法であるとして,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,前記社会福祉法人に加算金の請求をすることを市長に対して求める請求が,棄却された事例
2 社会福祉法人が常勤の管理者を置かずに通所介護事業所,訪問介護事業所及び居宅介護支援事業所の各指定を申請するなどの不正の行為によって,その旨の指定を受け市から介護報酬の支払を受けていたにもかかわらず,同法22条3項に基づく加算金の請求及び民法709条に基づく損害賠償の請求を前記法人に対してしないことが違法であるとして,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,前記法人に介護報酬相当額及び加算金の請求をすることを市長に対して求める請求が,一部認容された事例
3 社会福祉法人が,その設置に係る通所介護事業所につき,偽りその他不正の行為により市から介護報酬の支払を受けていたにもかかわらず,同法人に対して介護報酬相当額及び介護保険法22条3項に基づく加算金を市に支払うよう請求しないことが違法であるとして,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,前記社会福祉法人に介護報酬相当額及び加算金の請求をすることを市長に対して求める訴えが,適法であるとされた事例

裁判要旨

 1 社会福祉法人が,その設置に係る通所介護事業所につき,偽りその他不正の行為により市から介護報酬の支払を受けていたにもかかわらず,同法人に対し,介護保険法22条3項に基づく加算金を市に支払うよう請求しないことが違法であるとして,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,前記社会福祉法人に加算金の請求をすることを市長に対して求める請求につき,同法人は,事業所の開設当初から,人員基準の偽装を意図して,実際は看護師を週2日各2時間派遣されるにすぎないにもかかわらず,看護師を週5日各6時間派遣されることを内容とする派遣契約を締結し,認知症専用併設型通所介護事業所としての人員基準の充足を偽装し,これに基づいて介護報酬を請求したものであるから,偽りその他不正の行為による介護報酬の請求として前記加算金の対象となるが,不適正請求金額を特定するに足りる証拠はないとして,前記請求を棄却した事例
2 社会福祉法人が常勤の管理者を置かずに通所介護事業所,訪問介護事業所及び居宅介護支援事業所の各指定を申請するなどの不正の行為によって,その旨の指定を受け市から介護報酬の支払を受けていたにもかかわらず,同法22条3項に基づく加算金の請求及び民法709条に基づく損害賠償の請求を前記法人に対してしないことが違法であるとして,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,前記法人に介護報酬相当額及び加算金の請求をすることを市長に対して求める請求につき,指定通所介護事業者,指定訪問介護事業者及び指定居宅介護支援事業者は,事務所ごとに専らその職務に従事する常勤の管理者を置かなければならないにもかかわらず,各指定に係る申請に当たり作成した管理者経歴書に,管理者が幼稚園の事務長であることを記載しなかったことは,同法人が,前記各指定申請の時点で,同人の管理者としての勤務が現状程度の不十分なものとなることを知りながら,同人の経歴書に虚偽の記載をしたものであり,不正の手段により前記各指定を受けたというべきであるから,これを前提として受領した介護報酬は,「偽りその他不正の行為により支払を受けた」ものに当たるとして,介護報酬相当額及び加算金のうち返還済みの金額を除く請求金額について,前記請求を一部認容した事例
3 社会福祉法人が,その設置に係る通所介護事業所につき,偽りその他不正の行為により市から介護報酬の支払を受けていたにもかかわらず,同法人に対して介護報酬相当額及び介護保険法22条3項に基づく加算金を市に支払うよう請求しないことが違法であるとして,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,前記社会福祉法人に介護報酬相当額及び加算金の請求をすることを市長に対して求める訴えにつき,介護保険法22条3項所定の加算金請求権は,指定介護事業者が偽りその他不正の行為により介護報酬の支払を受けた場合に,その支払った額の回復に加え,法が特に損害額を法定して市町村に認めた損害賠償請求権の性質を有すると解するのが相当であるし,同項所定の加算金請求権を除く請求権は,本来支払を受ける資格のない者が不正に支払を受けた介護報酬と同額の返還を求める請求権であって,不当利得返還請求権又は損害賠償請求権の性質を有すると解するのが相当であるから,前記各請求権は地方自治法242条の2第1項4号の訴えの対象になるとして,前記訴えを適法とした事例

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