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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成21(行ク)4

事件名

 仮の義務付け申立事件

裁判年月日

 平成21年6月26日

裁判所名

 奈良地方裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 市町村の教育委員会が当該市町村の区域内に住所を有する就学予定者について,就学すべき中学校を指定した上,その保護者に対し当該中学校の入学期日を通知する行為の行政処分性
2 四肢機能等の障害を有する児童が,行政事件訴訟法37条の5第1項に基づいてした,町教育委員会が前記児童の就学すべき中学校として町立中学校を指定することの仮の義務付けを求める申立てが,認容された事例

裁判要旨

 1 市町村の教育委員会が当該市町村の区域内に住所を有する就学予定者について,就学すべき中学校を指定した上,その保護者に対し当該中学校の入学期日を通知する行為(学校教育法施行令5条)は,同令において,同通知に係る就学予定者には,視聴覚障害者等のうち,市町村の教育委員会が,その者の障害の状態に照らして,当該市町村の設置する中学校において適切な教育を受けることができる特別の事情があると認める者(認定就学者)が含まれ,市町村の教育委員会は,認定就学者の認定をした場合,速やかに中学校の指定と保護者に対する通知を行わなければならないとされている一方,就学予定者の就学すべき中学校の指定,認定就学者の認定等について,就学予定者ないし保護者の関与に関する明文の規定が置かれていないことから,当該市町村との間で,当該生徒について当該中学校に係る在学関係という公法上の法律関係を形成するとともに,その保護者に当該生徒を当該中学校に就学させる義務を生じさせるものとして,抗告訴訟の対象となる行政処分に当たる。
2 四肢機能等の障害を有する児童が,行政事件訴訟法37条の5第1項に基づいてした,町教育委員会が前記児童の就学すべき中学校として町立中学校を指定することの仮の義務付けを求める申立てにつき,学校教育法施行令5条1項2号にいう認定就学者に該当するか否かの判断については,当該市町村の教育委員会に一定限度の裁量の余地が認められるものの,当該生徒及び保護者の意向,当該市町村の設置する中学校の施設や設備の整備状況,指導面で専門性の高い教員が配置されているか否か,当該生徒の障害の内容,程度等に応じた安全上の配慮や適切な指導の必要性の有無,程度などを総合考慮した上,当該生徒を当該市町村の設置する中学校に就学させることが,障害のある生徒の教育上のニーズに応じた適切な教育を実施するという観点から相当といえるか否かを慎重に検討しなければならず,その判断が,事実に対する評価が合理性を欠くなど著しく妥当性を欠き,特別支援教育の理念を没却するような場合には,その裁量権を逸脱又は濫用したものとして違法というべきであるところ,前記児童及び保護者は前記町立中学校への就学を強く希望していること,現状の設備を前提としても前記児童の就学は可能であること,前記児童には知的障害や精神疾患等は認められず,教育による補助が必要であるのは,専ら四肢機能を補うことに尽き,現在の教員らによっても対応可能であること等からすれば,前記町立中学校において適切な教育を受けることができる特別の事情があると認められ,前記教育委員会は,前記児童が就学認定者に該当するか否かについて慎重に判断したとは認めがたく,その判断は著しく妥当性を欠き,特別支援教育の理念を没却するものといわざるを得ず,その裁量権を逸脱又は濫用したものとして違法であって,本案について理由があるとみえると認められ,また,町立中学校の普通学級で学校生活を送ることによって前記児童が心身共に成長する時間が刻々と失われている状況にあり,その期間が3か月近くに及んでいることを併せ考慮すると,償うことのできない損害を避けるために緊急の必要があるなどとして,前記申立てを認容した事例

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