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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成19(行コ)405

事件名

 健康保険受給権確認請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成18年(行ウ)第124号)

裁判年月日

 平成21年9月29日

裁判所名

 東京高等裁判所

分野

 行政

判示事項

 健康保険法63条1項に規定する「療養の給付」に当たる療養(インターフェロン療法)に加えて,「療養の給付」に当たらない療養(活性化自己リンパ球移入療法)を併用する診療(いわゆる混合診療)を受けた場合であっても,「療養の給付」に当たる診療については,なお同法に基づく「療養の給付」を受けることができる権利を有することの確認を求める請求が,棄却された事例

裁判要旨

 健康保険法(以下「法」という。)63条1項に規定する「療養の給付」に当たる療養(インターフェロン療法)に加えて,「療養の給付」に当たらない療養(活性化自己リンパ球移入療法)を併用する診療(いわゆる混合診療)を受けた場合であっても,「療養の給付」に当たる診療については,なお法に基づく「療養の給付」を受けることができる権利を有することの確認を求める請求につき,昭和59年改正により健康保険法(平成18年法律第83号による改正前。以下「旧法」という。)86条の特定療養費制度が創設され,専門的な検討を経て承認された高度先進医療を含む混合診療をこれを実施するにふさわしい医療機関として承認された特定承認保険医療機関において受けた場合に,その保険診療(療養の給付)に相当する基礎的診療部分について特定療養費を支給(保険給付)することとした趣旨に照らすと,旧法は,これに該当しない場合,すなわち高度先進医療を含む混合診療を特定承認保険医療機関以外の医療機関において受けた場合には,保険給付(特定療養費の支給,したがって,「療養の給付」に相当するもの)をしないものとしたと解されること,法86条の保険外併用療養費制度は,特定療養費制度を引き継いだもので,特定療養費制度を見直し,保険診療と保険外診療(自由診療)との併用を認める療養(診療)について,保険導入のための評価を行う評価医療と,保険導入を前提としない選定療養に再構成したものであり,従前の高度先進医療は,必ずしも高度ではない先進医療技術と共に,評価療養のうちの先進医療に分類され,これを実施し得る医療機関について,従前の特定承認保険医療機関の制度を廃止し,厚生労働大臣が定める要件を満たすものとして届け出た保険医療機関において実施し得るものとし,その療養に要した費用について,特定療養費と同様に算定される先進医療を除く保険診療(療養の給付)に相当する基礎的診療部分について保険外併用療養費を支給するものであることなどからすると,保険外併用療養費制度を導入した法の下においても,先進医療に係る混合診療については,保険外併用療養費の支給要件を満たす場合に限り,当該混合診療のうちの保険診療(療養の給付)に相当する基礎的診療部分について保険給付(保険外併用療養費の支給)が認められているものであり,これに該当しない場合には,保険診療に相当する基礎的診療部分についても,「療養の給付」として保険給付を受けることはできないとするとともに,法は,労働者の業務外の事由による疾病等に関して保険給付を行い,もって国民生活の安定と福祉の向上に寄与することを目的とし(法1条),基本的理念として,健康保険制度については,給付の内容及び費用の負担の適正化,国民が受ける医療の質の向上等を総合的に図りつつ,実施されなければならない(法2条)としていること等に照らして,保険により提供する医療について,保険財源の面からの制約や,提供する医療の質(安全性,有効性等)の確保等の観点から,その範囲を限定することは,やむを得ず,かつ,相当なものといわざるを得ないのであって,保険により提供する医療の質の確保等という観点から保険外併用療養費制度に該当する混合診療とそれ以外の混合診療とで保険医療に相当する部分に係る保険給付の可否の区別を設けたことには,合理性が認められるので,憲法14条等に違反しないとして,保険外併用療養制度に該当しない混合診療であるインターフェロン療法と活性化自己リンパ球移入療法を併用して行う場合には,活性化自己リンパ球移入療法だけでなく,インターフェロン療法も「療養の給付」に当たらず,法による保険給付を受けられないとして,前記請求を棄却した事例

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