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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成21(行コ)27

事件名

 公金違法支出損害賠償請求控訴事件(原審・宇都宮地方裁判所平成17年(行ウ)第15号)

裁判年月日

 平成21年12月24日

裁判所名

 東京高等裁判所

分野

 行政

判示事項

 合併前の町が適正価格を上回る額で土地売買契約を締結し,代金を支出したことは違法であるとして,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,合併前の町長であった者個人に損害賠償の請求をすることを合併後の市長に対して求める請求に係る訴訟の係属中にされた,同法96条1項10号に基づく前記請求に係る損害賠償請求権を放棄する旨の議決が,無効とされた事例

裁判要旨

 合併前の町が適正価格を上回る額で土地売買契約を締結し,代金を支出したことは違法であるとして,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,合併前の町長であった者個人に損害賠償の請求をすることを合併後の市長に対して求める請求に係る訴訟の係属中にされた,同法96条1項10号に基づく前記請求に係る損害賠償請求権を放棄する旨の議決につき,住民訴訟により違法な行為を行った職員に損害賠償請求をすることを当該普通地方公共団体の執行機関又は職員に対して求める請求をする場合,当該裁判において判断されるのは,当該普通地方公共団体が当該職員に対して損害賠償請求権を有するか否かという権利義務の存否についてであるところ,同号に規定する権利の放棄の議決は十分に尊重される必要があり,損害賠償請求権について放棄を制限する法令が存在しないことや,住民訴訟が提起されたからといって直ちに同議決が妨げられるべき理由がないこと等によれば,同議決による放棄の可否は,住民の代表である議会が損害賠償請求権の発生原因,賠償額,債務者の状況,放棄することによる影響,効果等を総合考慮して行う良識ある判断に委ねられていると解され,裁判所としては,原則として,同議決の当否について判断すべきではないものの,前記議決は,前記請求を一部認容する旨の第1審判決の言渡し及び当審における口頭弁論終結の後にされていること等からすると,前記第1審判決の認定判断を覆し,当審において同様の認定判断がされることを阻止するために議決されたものであるとした上,裁判所が存在すると認定判断した損害賠償請求権について,これが存在しないとの立場から,裁判所の認定判断を覆し,あるいは裁判所においてそのような判断がされるのを阻止するために権利放棄の議決をすることは,損害賠償請求権の存否について,裁判所の判断に対して議会の判断を優先させようとするものであって,権利義務の存否について争いのある場合には,その判断を裁判所に委ねるものとしている三権分立の趣旨に反するというべきであり,同法も,そのような裁判所の認定判断を覆す目的のために権利放棄の議決が利用されることを予想,認容しているものと解することはできないとして,前記議決は,地方自治法により議会に与えられた裁量権を逸脱濫用したものとして無効であるとされた事例

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