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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成20(行コ)22

事件名

 不作為の違法確認等請求控訴事件(原審・仙台地方裁判所平成19年(行ウ)第13号)

裁判年月日

 平成22年1月25日

裁判所名

 仙台高等裁判所

分野

 行政

判示事項

 行政機関の保有する情報の公開に関する法律に基づく文書の開示請求に対する同法9条の決定が遅延したことによって損害を被ったとしてされた,国家賠償法1条に基づく損害賠償請求が,棄却された事例

裁判要旨

 行政機関の保有する情報の公開に関する法律に基づく文書の開示請求に対する同法9条の決定が遅延したことによって損害を被ったとしてされた,国家賠償法1条に基づく損害賠償請求につき,行政機関の保有する情報の公開に関する法律所定の開示請求権は十分な具体性を有していること,同法は国民主権の理念にその基盤を置くものであること,現代社会において情報に接することは何らかの価値をもたらすことが通常であること等からすると,開示請求者は,同法の規定に基づき,適切な時期に開示決定等を受けることのできる利益を有するものであり,かつ,この利益は開示請求者の個別的な利益として同法上保護されたものといえるところ,開示請求を受けた行政機関の長が開示決定等を遅延し,その遅延が同法に違反するものであったとしても,その遅延が直ちに国家賠償法上違法とされるものではなく,同法上違法とされるためには,当該公務員が開示決定等を行い,あるいは開示決定等をするために必要な準備行為を行うに当たって,職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく,漫然とこれを遅延せしめたと認められることを要し,その認定判断に当たっては,開示請求にかかる行政文書の量や所在,当該行政文書を審査して開示又は不開示を決することの難易等のほか,行政機関の事務処理態勢,担当する事務の繁閑,その他の事情を総合考慮する必要があるとした上,前記開示請求に係る対象文書が著しく大量であること,当該対象文書は複数の在外日本総領事館における報償費の支出に関する文書であり,その開示又は不開示の判断に当たっては,高度な政策的判断や専門的技術的判断を要し,秘密保持のために開示作業に従事する人員を限定する必要があったこと,同作業に従事する者がいずれも複数の業務を抱えて多忙であったこと等を考慮すれば,開示決定等を行い,あるいは開示決定等をするために必要な準備行為を行うに当たって,職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく,漫然とこれを遅延せしめたものであるということはできず,当該開示請求に対する開示決定等の遅延が国家賠償法上違法であるということはできないとして,前記損害賠償請求を棄却した事例

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