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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成21(行コ)147

事件名

 損害賠償等請求控訴事件

裁判年月日

 平成22年5月27日

裁判所名

 大阪高等裁判所

分野

 行政

判示事項

 地方公営企業である市水道事業の管理者の補助職員たる市水道部の総務課長が,専決により,労働組合活動を理由として職員らの職務専念義務を免除し,勤務しないことを黙示的に承認して,同免除を受けた期間に対応する給与及び勤勉手当を支給する旨の支出命令を行ったこと,及び同管理者が,同支給を阻止すべき指揮監督上の義務に違反したことが違法であるとして,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,総務課長の地位にあった者個人に賠償命令をすることを同管理者に対して求める請求及び同管理者の地位にあった者個人に損害賠償の請求をすることを同管理者に対して求める請求が,いずれも棄却された事例

裁判要旨

 地方公営企業である市水道事業の管理者の補助職員たる市水道部の総務課長が,専決により,労働組合活動を理由として職員らの職務専念義務を免除し,勤務しないことを黙示的に承認して,同免除を受けた期間に対応する給与及び勤勉手当を支給する旨の支出命令を行ったこと,及び同管理者が,同支給を阻止すべき指揮監督上の義務に違反したことが違法であるとして,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,総務課長の地位にあった者個人に賠償命令をすることを同管理者に対して求める請求及び同管理者の地位にあった者個人に損害賠償の請求をすることを同管理者に対して求める請求につき,労働組合法7条3号及び地方公務員法55条の2第6項は,勤務時間中の組合活動が原則として無給であることを前提としており,組合活動自体は職務との関連性を有せず,行政目的の達成という公益上の必要性も認め難いことを考え併せれば,職員が勤務時間中に職務を離れて行う組合活動について勤務しないことを承認することは地方公営企業法38条2項の趣旨に反し,裁量権の範囲を超え,これを濫用したものとして違法であり,職務免除を与えた期間につき減額を行わないでした給与及び勤勉手当の支出命令も財務会計法規上の義務に違反するものとして当然に違法になるが,総務課長については,労働基本協約において,一定の組合活動を行うこと及び当該職員の身分について他の職員と同様にし,不利益な取扱いはしないことが定められており,同協約に基づく職務免除に係る運用が行われ,前記承認以前においては,職務免除があった期間の給与も支払う扱いが労使慣行として長期間にわたって継続してされていたものと推認されること等から,労使慣行を改めるべき措置をとるべき義務に違反した過失があるとしても,重過失があったとまではいえないとし,また,同管理者については,総務課長による給与等の支給を阻止することなく漫然と放置していたことは,故意又は過失により補助職員が財務会計上の違反行為をすることを阻止すべき指揮監督上の義務に違反し,不法行為に当たるものの,一審判決後,前記支給を受けた職員らが前記支給分及びこれに対する遅延損害金を市水道事業に自主返納したことから,違法な前記承認及びそれに係る前記支出命令により市水道事業に発生した損害は,填補されたことが明らかであるなどとして,前記各請求をいずれも棄却した事例

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