裁判例結果詳細
行政事件 裁判例集
- 事件番号
平成21(行コ)28
- 事件名
生活保護変更決定取消請求控訴事件(原審・福岡地方裁判所平成18年(行ウ)第12号,平成19年(行ウ)第18号)
- 裁判年月日
平成22年6月14日
- 裁判所名
福岡高等裁判所
- 分野
行政
- 判示事項
厚生労働大臣の定めた生活保護基準(昭和38年厚生省告示第158号)の改定により70歳以上で生活保護を受けている者に対する老齢加算が減額又は廃止されたことに伴い,福祉事務所長が生活保護法25条2項に基づいてした保護費を減額する旨の保護変更決定が,違法とされた事例
- 裁判要旨
厚生労働大臣の定めた生活保護基準(昭和38年厚生省告示第158号)の改定により70歳以上で生活保護を受けている者に対する老齢加算が減額又は廃止されたことに伴い,福祉事務所長が生活保護法25条2項に基づいてした保護費を減額する旨の保護変更決定につき,同法56条が,被保護者は正当な理由がなければ既に決定された保護を不利益に変更されることがないと定める趣旨は,一度保護の実施機関が被保護者に対し保護を決定したならば,法に定める事情の変更の場合に被保護者が該当し,かつ,保護の実施機関が法の定める変更の手続を正規にとらないうちは,被保護者は,その決定された内容において保護を実施することを請求する具体的権利を有するということにあることに鑑みれば,前記保護基準の改定に基づいて既に決定された保護を不利益に変更される被保護者との関係においては,単に同保護基準が改定されたというだけでは,同条にいう「正当な理由」があるとはいえず,同保護基準の改定そのものに「正当な理由」がない限り,これに基づく保護の不利益変更は同条に反し違法となるものと解されるところ,この「正当な理由」の有無を判断するに当たっては,同保護基準の不利益変更についての厚生労働大臣の判断が裁量権の行使としてされたことを前提として,その判断要素の選択や判断過程に合理性を欠くところがないかを検討し,その判断が,重要な事実の基礎を欠くか,又は社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められる場合に限って,裁量権の逸脱又は濫用として「正当な理由」のない不利益変更に当たるものと解するのが相当であるとした上,前記改定についての厚生労働大臣の判断は,厚生労働省の社会保障審議会に設置された専門委員会による中間取りまとめ中の老齢加算に関する記述を前提としているところ,同記述中の重要な事項につき,何ら検討されず,又は十分検討されずに行われたものであるから,考慮すべき事項を十分考慮しておらず,又は考慮した事項に対する評価が明らかに合理性を欠き,その結果,社会通念に照らし著しく妥当性を欠いたものであり,裁量権の逸脱又は濫用として「正当な理由」のない保護基準の不利益変更に当たるとして,前記保護変更決定を同条に反し違法とした事例
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