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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成22(行コ)40

事件名

 建築確認処分取消等請求控訴事件(原審・大阪地方裁判所平成19年(行ウ)第161号)

裁判年月日

 平成22年7月30日

裁判所名

 大阪高等裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 大阪市風致地区内における建築等の規制に関する条例(昭和45年大阪市条例第10号)に違反して風致地区内に存する土地内の木竹を伐採したとして提起された同条例10条1項に基づく是正命令を発令することの義務付けの訴えにつき,前記土地の周辺住民の原告適格が否定された事例
2 都市計画法29条1項に基づく開発許可処分の無効確認を求める訴えが,同法38条に基づく開発行為の廃止の届出がされたことにより訴えの利益が消滅したとして,却下された事例

裁判要旨

 1 大阪市風致地区内における建築等の規制に関する条例(昭和45年大阪市条例第10号)に違反して風致地区内に存する土地内の木竹を伐採したとして提起された同条例10条1項に基づく是正命令を発令することの義務付けの訴えにつき,同項に規定する是正命令が適切に行われない場合に周辺住民が被る可能性のある被害は,そのような一定の区域における良好な自然風景としての景観の恵沢を享受する利益(景観利益)が害されるというものであるところ,同条例制定の根拠たる都市計画法は,風致地区における規制については,その目的として「風致を維持する」ことのみを定め,その内容も政令及び条例に委ねており,具体的な規定を置いておらず,その規定内容から景観利益を個々の周辺住民の個別的利益として保護する趣旨を読み取ることはできないこと,同法58条1項に基づき定められた風致地区内における建築等の規制に係る条例の制定に関する基準を定める政令(昭和44年政令第317号)は,建築等の行為について一般的に規制する規定は置くものの,周辺住民の個別的利益に配慮したことがうかがわれる規定は何ら存在せず,同政令の規定内容から,景観利益を個々の周辺住民の個別的利益として保護する趣旨を読み取ることは困難であること,同条例に個々の周辺住民の個別的利益を保護する趣旨をうかがわせる規定は存在せず,同条例においても,景観利益を個々の周辺住民の個別的利益として保護する趣旨を読み取ることはできないこと等から,前記土地の周辺住民は,同条例10条1項に規定する是正命令がされないことにより,自己の権利又は法律上保護された利益を侵害され,又は必然的に侵害されるおそれのある者であるということはできないとして,その原告適格を否定した事例
2 都市計画法29条1項に基づく開発許可処分の無効確認を求める訴えにつき,都市計画法における開発許可は,これを受けなければ適法に開発行為を行うことができないという法的効果のほか,当該開発許可を受けた開発区域内における建築行為等も制限するものであるところ,同法38条に基づく開発行為の廃止の届出がされた場合には,原則として,同届出に係る開発許可の法的効果は消滅し,もはや当該開発許可に係る開発行為を適法に行うことができないことになる一方,前記開発許可に係る開発区域内においても建築行為等につき規制を受けないこととなるので,前記開発許可の取消し又は無効確認を求めることについての法律上の利益も失われたと解するのが相当であり,同届出がされたことにより訴えの利益が消滅したとして,前記訴えを却下した事例

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