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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成19(行ウ)89

事件名

 水俣病認定申請棄却処分取消等請求事件

裁判年月日

 平成22年7月16日

裁判所名

 大阪地方裁判所

分野

 行政

判示事項

 公害健康被害補償法(昭和62年法律第97号により公害健康被害の補償等に関する法律と題名改正)4条2項に基づく水俣病認定の申請に対し県知事がした棄却処分の取消し及び申請者の疾病が水俣病である旨の認定をすることの義務付けを求める各請求が,いずれも認容された事例

裁判要旨

 公害健康被害補償法(昭和62年法律第97号により公害健康被害の補償等に関する法律と題名改正)4条2項に基づく水俣病認定の申請に対し県知事がした棄却処分の取消し及び申請者の疾病が水俣病である旨の認定をすることの義務付けを求める各請求につき,環境庁企画調査局環境保健部長が昭和52年7月1日に発出した「後天性水俣病の判断条件について」と題する通知(昭和52年環保業第262号)に規定された後天性水俣病の判断条件は,その策定経緯等からすると,これに規定する要件を満たす者については水俣病にかかっているものと認めて差し支えないというべきであり,その意味において水俣病認定における前記判断条件の意義を否定することはできないが,前記判断条件の要件を満たさない者について,症候の組合せの要件を満たさないという一事をもって直ちに水俣病にかかっていないものということはできず,前記組合せを満たさない各症候についても,その内容や発現の経緯等により,水俣病と考えられる可能性の程度は様々であり,さらに,申請者のメチル水銀に対する曝露状況等の疫学的条件に係る個別具体的事情等を総合考慮することにより,水俣病にかかっているものと認める余地があり,そして,臨床上把握し得る神経症候が四肢末端優位の感覚障害のみである者については,メチル水銀に対する曝露歴等の疫学的条件のほか,当該感覚障害が水俣病にみられる感覚障害としての特徴を備えているかといった点や,当該感覚障害について水俣病以外の原因,取り分け糖尿病や頸椎狭窄等によるものであることを疑わせる事情が存在するかどうかといった点等,水俣病認定申請者に係る具体的な事情を総合的に検討して水俣病にかかっていたものと認められるか否かを判断すべきであるとした上,前記申請者が前記処分時に有していた感覚障害は,社会通念に照らし,魚介類に蓄積されたメチル水銀の経口摂取によって招来されたものであると認めるのが相当であり,前記申請者は,前記処分時において水俣病にかかっていたものと認められるとして,前記各請求をいずれも認容した事例

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