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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成19(行コ)7

事件名

 原爆症認定申請却下処分各取消等請求控訴事件(原審・名古屋地方裁判所平成15年(行ウ)第20号,平成16年(行ウ)第39号)

裁判年月日

 平成22年3月11日

裁判所名

 名古屋高等裁判所

分野

 行政

判示事項

 原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律11条1項に基づく原爆症認定の各申請に対し,厚生労働大臣が各申請者の疾病等には放射線起因性がないとしてした,前記各申請を却下する旨の各処分の各取消請求が,一部認容された事例

裁判要旨

 原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律11条1項に基づく原爆症認定の各申請に対し,厚生労働大臣が各申請者の疾病等には放射線起因性がないとしてした,前記各申請を却下する旨の各処分の各取消請求につき,放射線起因性の判断に当たっては,現時点においては線量評価システムとしてはDS86に勝るものは考案されていないことから,同システムには限界ないし問題点があることを考慮に入れた上で参考とし,原子爆弾被爆者医療分科会が定めた旧審査の方針が定める原因確率についても問題点があることを考慮に入れるとともに,申請疾病自体の医学的知見,放射能や放射線に関する科学的知見,申請疾病と放射線との関連性に関する科学的知見あるいは疫学的知見は日々進歩するものであることを考慮に入れるべきであり,特に,遠距離地点での被爆者や入市被爆者についての被爆線量を推定する際には,原爆症認定の申請をした被爆者に急性症状が認められる場合には,原爆放射線の影響を受けたことの根拠の1つとして考慮し,その具体的症状,すなわち,その症状の具体的な内容や程度,発症の時期や症状が継続した期間等を把握し,さらに被爆前後の生活状況や健康状態を比較検討等する必要があるのであって,これらの事情を勘案して,原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律の立法趣旨に照らし,当該申請疾病が放射線に起因しているということを,通常人であれば,疑いを差し挟まない程度に真実であるという確信を持ち得るものかどうかを判断して,決すべきであるとした上,前記各申請者のうち長崎の爆心地から約3.1キロメートルの造船所の事務所内で被曝した当時18歳の女性がした申請疾病を両眼白内障とする原爆症認定の申請については,旧審査の方針で算出される線量よりは多量の線量を被爆しているものと推認されること,同人が発症した白内障は放射線に起因する白内障の発現形態の特徴である水晶体後嚢下に混濁が初発していること等を照らし合わせると,同人の白内障は,その発症または進行に原爆による放射線が影響を及ぼした高度の蓋然性があるものと認めることができるので,放射線起因性が認められるとして,前記各請求を一部認容した事例

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