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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成21(行コ)169

事件名

 神戸市外郭団体への人件費支出損害賠償等請求控訴事件(原審・神戸地方裁判所平成20年(行ウ)第76号)

裁判年月日

 平成22年8月27日

裁判所名

 大阪高等裁判所

分野

 行政

判示事項

 市がその職員を派遣している団体に対する補助金等の支出が違法であるとして,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,市長個人に損害賠償の請求をすることを市長に対して求める請求が,訴訟係属中に市議会が前記補助金等の支出に係る損害賠償請求権を放棄する旨の条例改正を行ったことにより同請求権は消滅したとして,棄却された事例

裁判要旨

 市がその職員を派遣している団体に対する補助金等の支出が違法であるとして,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,市長個人に損害賠償の請求をすることを市長に対して求める請求につき,地方自治法96条1項10号が,地方公共団体の権利放棄について,法令や条例の定めがある場合を除き,執行機関である地方公共団体の長ではなく議会の議決事項としていることからすると,地方公共団体は,条例の形式によって権利を放棄することができ,同号が権利放棄を議会の議決事項としたのは,住民意思をその代表者を通じて直接反映させるとともに,執行機関の専断を排除する趣旨を含むものであるから,議会の議決以外に執行機関の執行行為を要するものではなく,前記補助金等の支出に係る損害賠償請求権の放棄を含む改正条例の公布及び施行により,その効果は当然に発生し,また,住民訴訟の対象となった請求権の放棄の可否は住民の代表である議会の良識ある合理的判断に委ねられているのであって,議会がその本来の権限に基づいて住民訴訟における請求に反した議決に出ることを妨げられる理由はなく,前記改正条例に係る議決は,先行した住民訴訟である別件訴訟の経緯を踏まえ,別件訴訟における裁判所の判断を尊重する形で,従来公益法人等への一般職の地方公務員の派遣等に関する法律(平成18年法律第50号により公益的団体等への一般職の地方公務員の派遣等に関する法律と題名改正)との関係で疑義があった市の派遣先団体等に対する派遣職員の給与相当額を含んだ補助金等の取扱いを是正するとの趣旨及び目的により行われたものと認めるのが相当であって,前記補助金等の支出に係る損害賠償請求の義務付けを求める当該訴訟の進行を阻害する目的でされたものとは認められないし,前記議決は,派遣先団体等を不当に優遇し,市の財政に過大な負担を与えるようなものとは認められないから,議決権の濫用には当たらず,前記改正条例の効力を否定すべき根拠はないから,仮に,前記補助金等の支出が違法であって市が市長個人に対して前記損害賠償請求権を取得したとしても,訴訟係属中に市議会がした同損害賠償請求権を放棄する旨の前記改正条例の制定,公布及び施行により同請求権は消滅したとして,前記請求を棄却した事例

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