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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成22(ラ)1259

事件名

 独占禁止法24条に基づく差止仮処分申立却下決定に対する抗告事件(原審・東京地方裁判所平成22年(ヨ)第20023号)

裁判年月日

 平成22年9月1日

裁判所名

 東京高等裁判所

分野

 独禁

判示事項

 電子機器部品の製造,販売等を営む株式会社が,取引先である計測機器等の製造,販売等を営む株式会社による取引に係る報酬の減額要請及び取引拒絶が私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律19条に違反するとして,同法24条所定の差止請求権を被保全権利としてした発注停止の差止め等を求める仮処分命令の申立てが,却下された事例

裁判要旨

 電子機器部品の製造,販売等を営む株式会社が,取引先である計測機器等の製造,販売等を営む株式会社による取引に係る報酬の減額要請及び取引拒絶が私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律19条に違反するとして,同法24条所定の差止請求権を被保全権利としてした発注停止の差止等を求める仮処分命令の申立てにつき,前記減額要請は,取引に係る報酬を1時間当たり2400円から1600円に引き下げるもので,大幅な減額の要請であるということができるが,?前記電子機器部品製造会社に委託していた計測機器の製造についてコストダウンの目的で中国への移管を検討していた前記計測機器製造会社が,国内での製造委託を継続することが可能であるか否かを検討するために,前記電子機器部品製造会社に大幅なコストダウンを求めることは不合理ではなく,また,前記計測機器製造会社が前記電子機器部品製造会社に提示した前記減額要請に係る取引条件が他の業者との取引条件との比較で不当に不利益な条件を設定するものであることの疎明は不十分であること,?同会社は前記計測機器製造会社から報酬の前記引下げが可能かどうかにつき検討を依頼され,数度にわたる交渉が行われた上,最終的に6か月の猶予期間をおいて取引拒絶に至ったもので,同取引拒絶に際し,金銭補償として同会社が1500万円を提示し,これを支払ったところ,この間の交渉において,同会社が計測機器の製造を中国へ移管することを検討しており,これを踏まえた減額要請であることが説明され,前記電子機器部品製造会社も,製造業者として,製造単価水準によってはコストダウンのため中国等海外への製造部門の移転が必要となり得ることは認識し得たものと推認されることに照らすと,前記計測機器製造会社の前記電子機器部品製造会社との協議が不誠実であったとか,不十分であったことの疎明は不十分であることから,前記減額要請が,前記計測機器製造会社の取引上の地位が前記電子機器部品製造会社に優越していることを利用して,正常な商習慣に照らして不当に取引の条件を設定したものとはいえず,昭和57年公正取引委員会告示第15号(平成21年公正取引委員会告示第18号による改正前)14項,独占禁止法2条9項5号ハに定める違反行為には該当せず,さらに,前記取引拒絶に至った理由は同会社が前記減額要請に応じなかったためであり,前記減額要請不当であるとはいえない以上,前記取引拒絶が不当であるとはいえないことなどから,被保全権利の疎明がないとして,前記申立てを却下した事例

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