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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成18(行ウ)80

事件名

 住民訴訟事件

裁判年月日

 平成23年3月23日

裁判所名

 名古屋地方裁判所

分野

 行政

判示事項

 市議会の会派が,市から交付された政務調査費のうち,所属議員らに個人経費分として支給したとする金額から同会派が市に返還した金額を控除した残額を不当に利得しているとして,市の住民らが,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,市長に対し,前記会派の権利義務を承継した新会派に前記残額と同額の不当利得金の返還請求をするよう求める請求が,一部認容された事例

裁判要旨

 市議会の会派が,市から交付された政務調査費のうち,所属議員らに個人経費分として支給したとする金額から同会派が市に返還した金額を控除した残額を不当に利得しているとして,市の住民らが,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,市長に対し,前記会派の権利義務を承継した新会派に前記残額と同額の不当利得金の返還請求をするよう求める請求につき,名古屋市会政務調査費の交付に関する条例(平成13年名古屋市条例第1号。平成20年名古屋市条例第1号による改正前)7条に基づき,会派に対して政務調査費の返還を求める場合には,不当利得返還請求権の一般的な主張立証責任の分配に従って,政務調査費の返還を請求する側において,返還を求める政務調査費の支出が「市政に関する調査研究に資するため必要な経費」の支出に当たらないことの主張,立証責任を負うことになるところ,前記条例の下においては,各会派が提出する収支報告書の支出欄には支出項目と項目ごとの金額等が記載されるにとどまり,支出の明細が明らかにされておらず,また,領収書等も公開されていないことからすると,返還を求められている会派側が何らの立証の負担も負わないとするのは相当でないから,返還を請求する側において相応の証拠をもって当該会派の提出した収支報告書の記載内容が正確でないことを主張,立証した場合には,会派側において政務調査活動の秘匿性の要請に抵触しない限度で政務調査費の支出状況を明らかにすべきであり,当該会派は,そのような最低限度の基本的な説明責任すら果たされていない政務調査費については不当利得として返還する義務を負うと解され,また,当該会派において政務調査費の支出状況を明らかにした場合であっても,返還を請求する側において,具体的な政務調査費の支出が,政務調査費の本来の使途及び目的に違反した不適切な支出であることを推認させる外形的事実を主張立証したときには,会派側において当該政務調査費の支出が政務調査費の本来の使途及び目的にかなうものであることを立証しない限り,当該政務調査費の支出は「市政に関する調査研究に資するため必要な経費」として支出したものでないとの立証があったものと扱うのが相当であるとした上,前記会派の支出のうち,前記会派所属議員提出に係る政務調査費の支出の概要を記載した陳述書に記載のないものについては,同会派は,個別の議員ごとの支出状況について何らの立証をしていないから,最低限度の基本的な説明責任を果たしておらず,また,前記陳述書に記載された支出のうち,事務所の借り上げ費については,名古屋市会政務調査費の使途基準及び収支報告書の閲覧に関する規程(平成13年名古屋市会達第1号)においては基本的に政務調査費の支出対象としては想定されていないところ,調査研究活動のために特に事務所を借り上げる必要があるなどの特別の事情につき何ら述べられていないことからすれば,「市政に関する調査研究に資するため必要な経費」として支出したものには当たらないから,同会派は,前記各支出の額を市に返還する義務を負うなどとして,前記請求を一部認容した事例

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