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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成22(行コ)8

事件名

 損害賠償請求控訴事件(原審・熊本地方裁判所平成13年(行ウ)第9号,差戻し前の控訴審・福岡高等裁判所平成16年(行コ)第22号)

裁判年月日

 平成23年5月24日

裁判所名

 福岡高等裁判所

分野

 行政

判示事項

 市が経営すると畜場の廃止に当たり,市が同と畜場の利用業者及び同と畜場で働くと殺業務等従事者に対して支援金を支払ったことは違法であるとして,地方自治法(平成14年法律第4号による改正前)242条の2第1項4号に基づき,市長であった者個人に対してされた損害賠償請求が,棄却された事例

裁判要旨

 市が経営すると畜場の廃止に当たり,市が同と畜場の利用業者及び同と畜場で働くと殺業務等従事者に対して支援金を支払ったことは違法であるとして,地方自治法(平成14年法律第4号による改正前)242条の2第1項4号に基づき,市長であった者個人に対してされた損害賠償請求につき,前記支援金の支出は,同法232条の2所定の「補助」としての性質を有するところ,同和対策事業の目的並びに地域の産業の振興及び職業の安定等を図る目的に照らし,特に社会通念上不合理な点や特に不公正な点は見受けられないから,同条所定の「公益上必要がある場合」に当たると認められ,また,前記支援金は,市議会での予算決議において,歳出予算上,地方自治法施行規則15条2項所定の「負担金,補助及び交付金」の節ではなく,「補償,補填及び賠償金」の節に計上されているところ,目節間における予算の流用は,普通地方公共団体の長の予算執行における裁量の範囲内の行為として原則として許容されるものの,議会による予算統制という目節が設けられた趣旨に照らし,実質的に議会による予算統制の潜脱となるような違法な予算執行を許容するに等しい結果をもたらすような場合には,裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとして許されないというべきであるとした上,市の執行部において不当に予算を取得する目的があった等の事情は認められないこと,市議会での歳出予算の審議において,議員らは,前記支援金が補助金としての性質を有することを了解し,使途について市が調査できないとしてもやむを得ないと認識した上で可決したことがうかがわれること,決算についても,市議会議員は前記支援金の支出につき,補助金の趣旨でされたものであると了解して認定されていることに加えて,前記支援金につき,支出の必要性や金額の相当性等についての判断が行われ,また,支出の前後において他の目的に流用されることを防止する措置が講じられており,支出した補助金の他への流用の防止という市費補助等取扱要綱の趣旨を損なうものではないこと等からすれば,前記支援金を補助金と解することにより,実質的に議会による予算統制の潜脱となるような違法な予算執行を許容するに等しい結果をもたらしたものとはいえず,裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとは認められないから,前記支援金の支出は,補助金の支出として適法であるとして,前記請求を棄却した事例

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