裁判例検索

裁判例結果詳細

行政事件 裁判例集

事件番号

 平成22(行ウ)286

事件名

 免許取消処分取消請求事件

裁判年月日

 平成23年7月12日

裁判所名

 東京地方裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 柔道整復師法4条3号所定の「罰金以上の刑に処せられた者」に該当するに至ったことを理由として同法8条1項に基づいてされた柔道整復師免許取消処分に,処分基準が作成されていないという手続上の瑕疵があるとしてした前記取消処分の取消請求が,棄却された事例
2 柔道整復師法4条3号所定の「罰金以上の刑に処せられた者」に該当するに至ったことを理由として同法8条1項に基づいてされた柔道整復師免許取消処分に,同処分通知書の理由付記が不十分であるという手続上の瑕疵があるとしてした前記処分の取消請求が,棄却された事例
3 柔道整復師法4条3号所定の「罰金以上の刑に処せられた者」に該当するに至ったことを理由として同法8条1項に基づいてされた柔道整復師免許取消処分に裁量権の範囲の逸脱又は濫用があるとしてした同処分の取消請求が,棄却された事例

裁判要旨

 1 柔道整復師法4条3号所定の「罰金以上の刑に処せられた者」に該当するに至ったことを理由として同法8条1項に基づいてされた柔道整復師免許取消処分に,処分基準が作成されていないという手続上の瑕疵があるとしてした前記取消処分の取消請求につき,行政手続法12条1項が,不利益処分における処分基準の策定を努力義務とした趣旨からすれば,不利益処分について処分基準が定められていないとしても,特段の事情がない限り,処分の瑕疵をもたらすものではないとした上で,柔道整復師法4条3号の定める要件自体は一義的に明確であり,その適用基準を設ける要はなく,他方,同法8条1項に基づく処分は,柔道整復師が同法4条各号のいずれかの事由に該当するときにされるものであり,処分が行われる事由は広範にわたっていることからすれば,あらかじめ処分基準を策定しておくことが必ずしも適切ではないと考えられ,また,同種の職業である医師等についても処分基準は策定されておらず,行政処分に際して意見聴取を受ける医道審議会において,その意見を述べるに当たっての考え方を取りまとめたものが存在するにとどまり,しかも,その内容は考え方に幅を持たせた抽象的なものであることにも照らせば,同法8条1項に基づく行政処分について処分基準が作成されていないことにつき,前記特段の事情があるとはいい難いことから,同処分に手続上の瑕疵はないとして,前記請求を棄却した事例
2 柔道整復師法4条3号所定の「罰金以上の刑に処せられた者」に該当するに至ったことを理由として同法8条1項に基づいてされた柔道整復師免許取消処分に,同処分通知書の理由付記が不十分であるという手続上の瑕疵があるとしてした前記処分の取消請求につき,同法4条3号の定める要件は明確であるし,この要件に該当したときに免許の取消し又は期間を定めた業務の停止のどの処分を行うかについては,処分行政庁の裁量に委ねられているところ,前記処分には,処分の原因となった事実及びそれに適用されるべき法令の条項を明確に特定できる理由が付されているのであり,免許の取消しから一定期間の業務停止までの比較的広い範囲を有する予定される処分から免許の取消しの処分が選択された理由についての記載はないものの,柔道整復師法8条1項に基づく行政処分については処分基準は定められておらず,医師等に関する処分について医道審議会が取りまとめている考え方も抽象的なものにとどまることを考慮すれば,前記処分に付された理由が,行政手続法14条1項本文の趣旨に照らし,同項本文の要求する理由付記として十分でないとまではいえず,同処分に瑕疵があるとまでいえるものではないとして,前記請求を棄却した事例
3 柔道整復師法4条3号所定の「罰金以上の刑に処せられた者」に該当するに至ったことを理由として同法8条1項に基づいてされた柔道整復師免許取消処分に裁量権の範囲の逸脱又は濫用があるとしてした同処分の取消請求につき,柔道整復師が柔道整復師法4条3号の規定に該当する場合に,免許を取り消し,又は柔道整復師としての業務の停止を命ずるかどうか,柔道整復師としての業務の停止を命ずるとしてその期間をどの程度にするかということは,当該刑事罰の対象となった行為の種類,性質,違法性の程度,動機,目的,影響のほか,当該柔道整復師の性格,処分歴,反省の程度等,諸般の事情を考慮し,同法8条1項の趣旨に照らして判断すべきものであるところ,その判断は柔道整復師免許の免許権者である処分行政庁の合理的な裁量に委ねており,免許を取り消す処分は,それが社会通念上著しく妥当を欠いて裁量権を付与した目的を逸脱し,これを濫用したと認められる場合でない限り,その裁量権の範囲内にあるものとして,違法とならないものというべきであるところ,刑事罰の対象となった事件は実際には行っていない柔道整復施術を行ったものと装い,自動車保険会社から柔道整復施術療養費を詐取した事案であり,柔道整復師という立場を利用して行ったものである上,懲役1年8月の実刑に処せられていることからすると,刑事処分の軽重の観点からしても,免許取消しの処分がされたことは,他の処分と比較して不当に重いとはいえず,前記処分が裁量権の範囲を逸脱し,又は濫用してされたものとはいえないとして,前記請求を棄却した事例

全文