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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成22(行コ)47

事件名

 行政文書不開示決定処分取消請求控訴事件(原審・名古屋地方裁判所平成21年(行ウ)第98号)

裁判年月日

 平成23年8月24日

裁判所名

 名古屋高等裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 愛知県情報公開条例(平成12年愛知県条例第19号)に基づいてされた,発達障害等を有すると考える児童生徒に対する指導助言が記載されている文書の開示請求に対して,同文書の存否を明らかにすることが,前記条例10条所定の「当該開示請求に係る行政文書が存在しているか否かを答えるだけで,不開示情報を開示することとなるとき」に該当しないとされた事例
2 発達障害等を有すると考える児童生徒に対する指導助言が記載されている文書に記載された情報が,愛知県情報公開条例(平成12年愛知県条例第19号)7条2号本文後段所定の「特定の個人を識別することはできないが,公にすることにより,なお個人の権利利益を害するおそれがあるもの」に当たるとされた事例
3 発達障害等を有すると考える児童生徒に対する指導助言が記載されている文書に記載された情報が,愛知県情報公開条例(平成12年愛知県条例第19号)7条6号本文所定の非開示事由(事務事業情報)に該当するとされた事例

裁判要旨

 1 愛知県情報公開条例(平成12年愛知県条例第19号)に基いてされた,発達障害等を有すると考える児童生徒に対する指導助言が記載されている文書の開示請求に対して,同文書の存否を明らかにすることにつき,各県立高等学校を単位として前記開示請求に応答するとすれば,開示するか否かに関わらず,当該県立高等学校において前記文書を管理しているか否かが判明して,同校に発達障害等を有すると考える生徒が在籍し又は在籍していたか否かが明らかになり,その生徒がごく少数である場合には,他の情報と照合することにより,発達障害等を有するとして指導助言を受け又は受けていた生徒を特定,識別することが可能になると考えられるものの,開示請求者は,各県立高等学校ごとの文書の開示を求めておらず,県が管理している文書の開示を求めているのみであることからすれば,前記開示請求の対象となる県立高等学校を一括して,その請求の当否を判断するのが相当であり,このように判断する場合には,前記文書に関係する高等学校には合計すると相当数の発達障害等を有すると考えられる生徒が在籍し又は在籍していたことから,前記文書の存否を明らかにすることにより個人識別情報を開示することとはならないとして,前記文書の存否を明らかにすることは,前記条例10条所定の「当該開示請求に係る行政文書が存在しているか否かを答えるだけで,不開示情報を開示することとなるとき」に該当しないとした事例
2 発達障害等を有すると考える児童生徒に対する指導助言が記載されている文書に記載された情報につき,前記文書には,本人の特性や特徴的な言動及びそれによって惹起される状況等のほか,本人や保護者との面談の内容,本人や保護者の気持ちや生活状況,専門機関による助言の内容並びに関係当事者の生育歴や家族関係等の背景事情等が,具体的かつ詳細に記録されており,これらは個人の人格に極めて密接に関連する情報であるとして,愛知県情報公開条例(平成12年愛知県条例第19号)7条2号本文後段所定の「特定の個人を識別することはできないが,公にすることにより,なお個人の権利利益を害するおそれがあるもの」に当たるとした事例
3 発達障害等を有すると考える児童生徒に対する指導助言が記載されている文書に記載された情報につき,前記文書には,本人の特性や特徴的な言動及びそれによって惹起される状況等のほか,本人や保護者との面談の内容,本人や保護者の気持ちや生活状況,専門機関による助言の内容並びに関係当事者の生育歴や家族関係等の背景事情等が,具体的かつ詳細に記録されており,これが公開されると,生徒の家族や関係者において,これらの詳細な事実関係や,それに対する忌憚ない意見をありのまま開示することに萎縮効果が生じ,これらの情報の収集や記録が困難になる結果,生徒に対する適正な支援や配慮が実現できなくなるおそれが高いとして,前記情報は,愛知県情報公開条例(平成12年愛知県条例第19号)7条6号本文所定の非開示事由(事務事業情報)に該当するとした事例

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