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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成23(行コ)326

事件名

 各行政処分取消等請求控訴事件(原審・横浜地方裁判所平成20年(行ウ)第89号,同21年(行ウ)第67号,同22年(行ウ)第33号,同第67号)

裁判年月日

 平成24年7月18日

裁判所名

 東京高等裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 県教育委員会が,県立学校の卒業式及び入学式における国歌斉唱時に起立しなかった教職員の氏名等を各学校長に経過説明書によって報告させ,これを収集,利用していることが,思想及び信条に関する個人情報の取扱いを制限する神奈川県個人情報保護条例(平成2年神奈川県条例第6号)6条に違反するとしてされた,同条例34条に基づく前記経過説明書に記載された情報(不起立情報)の利用停止請求に対し,県教育委員会がした利用停止をしない旨の決定(不停止決定)の取消しを求める請求が,棄却された事例
2 県教育委員会が,県立学校の卒業式及び入学式における国歌斉唱時に起立しなかった教職員の氏名等を各学校長に経過説明書によって報告させ,これを収集,利用していることが,個人情報は本人から収集しなければならないとする神奈川県個人情報保護条例(平成2年神奈川県条例第6号)8条3項本文に違反するとしてされた,同条例34条に基づく前記経過説明書に記載された情報(不起立情報)の利用停止請求に対し,県教育委員会がした利用停止をしない旨の決定(不停止決定)の取消しを求める請求が,棄却された事例

裁判要旨

 1 県教育委員会が,県立学校の卒業式及び入学式における国歌斉唱時に起立しなかった教職員の氏名等を各学校長に経過説明書によって報告させ,これを収集,利用していることが,思想及び信条に関する個人情報の取扱いを制限する神奈川県個人情報保護条例(平成2年神奈川県条例第6号)6条に違反するとしてされた,同条例34条に基づく前記経過説明書に記載された情報(不起立情報)の利用停止請求に対し,県教育委員会がした利用停止をしない旨の決定(不停止決定)の取消しを求める請求につき,前記条例6条1号にいう「思想,信条」に関する個人情報とは,人格そのものあるいは精神作用の基礎にかかわり,その人の政治的信念や個人の人格形成の核心をなす人生観,世界観の表れと外部から認識される情報をいうところ,前記不起立情報には,国歌斉唱時に起立しなかったという客観的,外形的な事実が記載されているにとどまり,起立しなかった動機,理由についての記載はないところ,一般的には,不起立の事実が,「日の丸」や「君が代」に否定的な歴史観ないし世界観と不可分に結び付くものとはいえず,その動機,理由についての情報なしに,不起立の事実自体が特定の思想又はこれに反する思想の表明として外部から認識されるものと評価することは困難であるから,前記不起立情報は,前記条例6条1号所定の個人情報に該当しないとして,前記請求を棄却した事例
2 県教育委員会が,県立学校の卒業式及び入学式における国歌斉唱時に起立しなかった教職員の氏名等を各学校長に経過説明書によって報告させ,これを収集,利用していることが,個人情報は本人から収集しなければならないとする神奈川県個人情報保護条例(平成2年神奈川県条例第6号)8条3項本文に違反するとしてされた,同条例34条に基づく前記経過説明書に記載された情報(不起立情報)の利用停止請求に対し,県教育委員会がした利用停止をしない旨の決定(不停止決定)の取消しを求める請求につき,実施機関である県教育委員会は,高校教育課長から各県立学校長あての通知により,卒業式及び入学式において国歌斉唱時に起立しなかった教職員の氏名と指導状況等を記載した経過説明書を提出するよう求め,各学校においては,式典当日に学校長等が,国歌斉唱の際に起立せずに着席した事実を同じ式場内から目視して確認し,その後,各学校の校長から国歌斉唱時に起立しなかった教職員に対し,起立しなかった事実の確認を求めており,これらの事実によれば,前記不起立情報は,実施機関がその所属の職員を介して本人から収集したものであるといえるから,同項に違反しないとして,前記請求を棄却した事例

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