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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成24(行コ)138

事件名

 固定資産税等賦課処分取消等請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成23年(行ウ)第305号)

裁判年月日

 平成24年7月11日

裁判所名

 東京高等裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 家屋に係る固定資産税の賦課決定処分の取消訴訟において主張された,前記賦課決定処分は同家屋に設置された第三者の所有に属する昇降機設備の価格を控除せずにされたものであるとの事由が,同家屋の価格に関する不服ではなく,課税客体の範囲の確定に関する不服であり,前記賦課決定処分の取消事由として主張することができるとされた事例
2 自己の所有する家屋についてされた固定資産税の賦課決定処分は,同家屋に設置された,同家屋とは別個の固定資産税の課税客体であり第三者の所有に属する昇降機設備の価格を控除しないでされた違法なものであるとして,前記賦課決定処分の取消しを求める請求が,棄却された事例
3 出訴期間内に提起された固定資産税賦課決定処分の取消しを求める訴えに,固定資産課税台帳に登録された価格に関する審査の申出に対して固定資産評価審査委員会がした却下決定の取消しを求める訴えが出訴期間経過後に追加的に併合して提起されたことにつき,行政事件訴訟法14条1項ただし書にいう「正当な理由」があるとされた事例

裁判要旨

 1 家屋に係る固定資産税の賦課決定処分の取消訴訟において主張された,前記賦課決定処分は同家屋に設置された第三者の所有に属する昇降機設備の価格を控除せずにされたものであるとの事由につき,地方税法が固定資産の登録価格についての不服の審査を固定資産評価審査委員会に委ねた趣旨からすれば,同委員会に申し立てることができる不服は,固定資産の評価について知識経験等を有する者らが判断するに相応しい事項でなければならず,何が課税客体であるかなどの法的判断についての不服は,同委員会に対する審査申出事項には当たらないとした上,前記事由は,最終的には前記家屋の評価額について争うものであるものの,前記昇降機設備が前記家屋とは別個の課税客体に当たること及び自らはその納税義務者ではないことを不服の理由とするものであり,これらの事項は法的な見地からの評価によって判断されるべきであるから,同委員会の審査申出事項には該当しないとして,前記事由を前記賦課決定処分の取消事由として主張することができるとした事例
2 自己の所有する家屋についてされた固定資産税の賦課決定処分は,同家屋に設置された,同家屋とは別個の固定資産税の課税客体であり第三者の所有に属する昇降機設備の価格を控除しないでされた違法なものであるとして,前記賦課決定処分の取消しを求める請求につき,前記昇降機設備は,前記家屋とその機能上の一体性が確保されている上,前記家屋を取引の対象として見た場合に,社会通念上,一般に前記昇降機設備を分離して取引をすることは考え難く,両者は取引上の一体性を有しているから,前記昇降機設備は,前記家屋に付合していると認められ,独立した償却資産として固定資産税の課税客体となることはなく,また,その所有者は前記家屋の所有者であるとして,前記請求を棄却した事例
3 出訴期間内に提起された固定資産税賦課決定処分の取消しを求める訴えに,固定資産課税台帳に登録された価格に関する審査の申出に対して固定資産評価審査委員会がした却下決定の取消しを求める訴えが出訴期間経過後に追加的に併合して提起されたことにつき,同台帳に登録された価格についての不服に当たるか否かの判断が微妙な事案においては,採るべき争訟の方法を誤る者が現れることもあり得るから,そうした者が救済を受ける機会を保障する必要があることについては,行政事件訴訟法20条の趣旨が当てはまる場合もあるとした上,本件においては,前記賦課決定処分の取消しの訴えのみを提起すれば足りると考え,前記却下決定の取消しを求める訴えを提起しなかったこともやむを得ないというべきであり,賦課決定の取消しを求める訴えの審理過程において,前記却下決定や前記賦課決定処分に係る審査請求棄却裁決とは異なる立場から,登録価格に対する不服は前記賦課決定処分の取消理由として主張できない旨の主張がされ,その時点では,既に前記却下決定の取消しを求める訴えの出訴期間を経過していたことからすると,同条の趣旨に鑑みれば,救済を受ける機会を保障する必要があるというべきであるとして,前記追加的併合に係る訴えには同法14条1項ただし書にいう「正当な理由」があるとした事例

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