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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成23(行ウ)150等

事件名

 障害者自立支援法に基づく介護給付費請求事件(甲事件),追加的併合申立事件(乙事件)

裁判年月日

 平成25年1月29日

裁判所名

 東京地方裁判所

分野

 行政

判示事項

 障害者自立支援法(平成23年法律第37号及び平成22年法律第71号による各改正前)に基づき,支給量を1月当たり744時間(1日あたり24時間)とする重度訪問介護の介護給付費支給決定を受けていた者が,入院期間中にも重度訪問介護事業所による1日24時間の重度訪問介護サービスを受けたところ,市から,入院期間中は1日当たり4時間分を超えては介護給付費を支給されないこととされ,入院期間中の介護給付費が支給されない1日4時間分を超える部分の介護利用料を前記事業所に支払ったことによる,前記支給決定障害者の市に対する,①同法29条1項に基づく前記支払済みの介護利用料と同額の介護給付費の支給を求める主位的請求が棄却され,②市が同人に対してした同法に基づく介護給付費支給申請を棄却した処分の取消しを求める予備的請求に係る訴えが却下された事例

裁判要旨

 障害者自立支援法(平成23年法律第37号及び平成22年法律第71号による各改正前)に基づき,支給量を1月当たり744時間(1日あたり24時間)とする重度訪問介護の介護給付費支給決定を受けていた者が,入院期間中にも重度訪問介護事業所による1日24時間の重度訪問介護サービスを受けたところ,市から,入院期間中は1日当たり4時間分を超えては介護給付費を支給されないこととされ,入院期間中の介護給付費が支給されない1日4時間分を超える部分の介護利用料を前記事業所に支払ったことによる,前記支給決定障害者の市に対する,①同法29条1項に基づく前記支払済みの介護利用料と同額の介護給付費の支給を求める主位的請求と②市が同人に対してした同法に基づく介護給付費支給申請を棄却した処分の取消しを求める予備的請求につき,同法には,介護給付費についての市町村等による支給決定に関する規定はなく,介護給付費は,同法29条3項及び4項並びにこれらの委任を受けた告示及び政令によって具体的に定まることとされているのであり,他に,市町村等による決定等の形成行為又は確認行為によって初めて具体的な権利が発生することとされていることをうかがわせる規定はないことからすると,市町村等が,支給決定障害者等に対し,事実関係を明確にするために支払決定という文言を用いることがあったとしても,それは,その行為によって,直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定することが法律上認められているものに該当せず,また,同法上,これが処分であることをうかがわせる手続規定も何ら存在しないから,行政事件訴訟法3条2項に規定する「処分」には該当しないと解するのが相当であり,前記支給決定障害者は,支払決定を経るまでもなく市に対し,障害者自立支援法29条1項に基づき介護給付費の支給を請求することができるというべきであるが,同法5条3項に規定する「居宅」とは,同法1条が,障害者等が自立した日常生活又は社会生活を営むことができるよう,必要な障害福祉サービスに係る給付その他の支援を行うことなどを目的とすると規定していることを併せ考慮すれば,重度の肢体不自由者であって常時介護を要する障害者が,同法5条3項に規定する重度訪問介護として,入浴,排泄又は食事の介護その他の便宜の供与を受けなければ,自立した日常生活又は社会生活を営むことができない場所をいうものを解されるところ,健康保険法,国民健康保険法,保険医療機関及び保険医療養担当規則の各規定や,「基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて」(平成22年3月5日保医発0305第2号。平成24年3月5日保医発0305第2号により廃止)で定められていた看護の内容,健康保険法等の一部を改正する法律(平成6年法律第56号)が付添看護を解消した趣旨に加え,障害者自立支援法7条が,他の法令による給付との調整について規定し,他の法令に基づき受けることができる給付を優先し,また,健康保険法63条1項5号及び国民健康保険法36条1項5号に規定する看護は,障害者自立支援法5条3項及び同法施行規則1条の3に規定する便宜とそのほとんどが重なっていることからするならば,支給決定障害者が病院に入院した場合には,同人に対し,健康保険法又は国民健康保険法が規定する療養の給付として保険医療機関の従業員により看護が全て行われることが予定されているため,病院は,障害者自立支援法5条3項に規定する「居宅」には該当しないと解すべきであり,同法は,前記支給決定障害者が病院に入院した場合には,同人が入院中に重度訪問介護を受け,これに関して介護給付費を支給することを予定していないものと解されるとして,前記主位的請求を棄却し,前記予備的請求に係る訴えについては,前記のとおり,支払決定は行政事件訴訟法3条2項にいう処分とはいえないから,不適法であるとして,これを却下した事例

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