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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成24(行コ)306

事件名

 設立認可処分取消請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成22年(行ウ)第754号)

裁判年月日

 平成25年9月25日

裁判所名

 東京高等裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 都市再開発法11条1項に基づく市街地再開発組合の設立認可について,当該市街地再開発組合の事業の施行に起因する大気汚染による健康被害等の権利侵害を受けると主張する施行区域の周辺住民らが,同設立認可の取消しを求める訴えにつき,前記住民らの原告適格が否定された事例
2 都市再開発法11条1項に基づく市街地再開発組合の設立認可について,当該市街地再開発組合の事業の施行により景観利益を侵害されると主張する施行区域の周辺住民らが,同設立認可の取消しを求める訴えにつき,前記住民らの原告適格が否定された事例

裁判要旨

 1 都市再開発法11条1項に基づく市街地再開発組合の設立認可について,当該市街地再開発組合の事業の施行に起因する大気汚染による健康被害等の権利侵害を受けると主張する施行区域の周辺住民らが,同設立認可の取消しを求める訴えについて,市街地再開発組合の事業の施行区域の周辺に居住する住民のうち,当該組合の事業の施行に起因して相当範囲にわたる大気の汚染,水質の汚濁,土壌の汚染,騒音,振動,地盤の沈下及び悪臭並びに日照阻害,風害等の公害に準ずる環境破壊による健康又は生活環境に係る著しい被害を直接に受けるおそれのある者は,当該市街地再開発組合の設立認可の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者として,その取消訴訟における原告適格を有するものといえるが,前記市街地再開発事業に関する都市計画の内容及び地区組合の事業計画の内容に照らして,前記住民らがこのような健康又は生活環境に係る著しい被害を直接的に受けるおそれがある事実は認められないとして,前記住民らの原告適格を否定した事例
2 都市再開発法11条1項に基づく市街地再開発組合の設立認可について,当該市街地再開発組合の事業の施行により景観利益を侵害されると主張する施行区域の周辺住民らが,同設立認可の取消しを求める訴えについて,市街地再開発組合の設立認可の根拠法令である都市再開発法及び都市計画法の規定は,第一種市街地再開発事業の施行区域に近接する地域内に居住しその良好な景観の恵沢を日常的に享受している不特定多数の者が有する景観利益についても環境影響評価等の手続を通じて適正な配慮がされるようにすることも,その趣旨及び目的とするものであるとした上,両法の関係法令である景観法の規定に基づいて景観行政団体が策定した景観計画において,良好な景観の形成に関する方針及び良好な景観の形成のための行為の制限に関する事項のうちの規制又は措置の基準が詳細かつ具体的に定められているのであれば,その定めから,第一種市街地再開発事業に関する都市計画の決定をするに当たって保護すべき景観の内容,場所的又は空間的な範囲,保護の方法態様等が具体的にうかがわれ,都市再開発法及び都市計画法並びにその関係法令の規定が,不特定多数の者の景観利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず,それが帰属する個々人の個別的利益としてもこれを保護すべきものとする趣旨を含むと解することができることとなるが,都の特別区が策定した景観計画には,前記市街地再開発事業の施行区域を含む区域に適用される良好な景観の形成のための行為の制限に関する事項のうちの規制又は措置の基準が定められているものの,これらは,いずれも第一種市街地再開発事業に関する都市計画の決定をするに当たって保護すべき景観の内容,場所的又は空間的な範囲,保護の方法態様等が具体的にうかがわれるほどには詳細かつ具体的なものではないとし,そのほかの規定に照らしても,違法な市街地再開発組合の事業の施行に起因する景観の破壊による被害を受けないという利益については,都市再開発法及び都市計画法の規定が,施行区域の周辺に居住する個々の住民に対して,それが帰属する個々人の個別的利益としてもこれを保護すべきものとする趣旨を含むと解することはできないとして,前記住民らの原告適格を否定した事例

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