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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成27(行ウ)102

事件名

 不当利得返還請求事件

裁判年月日

 平成30年9月27日

裁判所名

 東京地方裁判所

分野

 行政

判示事項

 被災者生活再建支援法人が,東日本大震災による住宅の被害の程度を大規模半壊とするり災証明書の発行を受けた被災者らに対し,被災者生活再建支援法に基づいてした支援金支給決定について,その後の調査により住宅の被害の程度が一部損壊に修正されて支給要件を欠くこととなったことを理由にこれを取り消したことが違法であるとされた事例

裁判要旨

 被災者生活再建支援法人が,東日本大震災による住宅の被害の程度を大規模半壊とするり災証明書の発行を受けた被災者らに対し,被災者生活再建支援法に基づいてした支援金支給決定について,その後の調査により住宅の被害の程度が一部損壊に修正されて支給要件を欠くこととなったことを理由にこれを取り消したことは,以下の(1)及び(2)など判示の事情の下では,同支給決定を取り消すことによる被災者の不利益が同支給決定の効果を維持することの不利益を上回るというべきであり,同支給決定を放置することが公共の福祉の要請に照らし著しく不当であると認めることはできないから,違法である。
(1) 同法に基づく支援金は,被災者において速やかに生活再建のために支出することが当然に予定されており,住宅の被害の程度が事後的に修正された場合に支援金の返還を求められるとすれば支援金制度の実効性が失われることになり,支援金について返還を要しないことに対する被災者の信頼を保護する必要性は高く,同支給決定を取り消すことによる被災者の不利益は大きいものであった。
(2) 上記被災者らは,同法に基づき上記法人が作成した業務規程に定める支援金支給決定を取り消し得る事由に該当せず,支援金の支給について帰責性もなく,また,住宅の被害の程度を大規模半壊とした調査は,公平・公正性及び適正性の観点から問題とされるものではなく,事後的な調査の結果に基づき被害の程度が修正されたというだけでは,適正な支給の実施に対する社会一般の信頼が損なわれるなどのおそれが生ずるとはいえないものであった。

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