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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成28(行ウ)462

事件名

 所得税更正処分等取消請求事件

裁判年月日

 令和2年1月30日

裁判所名

 東京地方裁判所

分野

 行政

判示事項

 保険医療機関である麻酔科クリニックを個人で開設する麻酔専門医である原告が他の保険医療機関で実施された手術について業務委託契約に基づき行った麻酔関連医療業務に係る報酬の金額が租税特別措置法(平成25年法律第5号による改正前のもの)26条1項にいう「社会保険診療につき支払を受けるべき金額」に該当しないとされた事例

裁判要旨

 1 ある患者の治療等について複数の保険医療機関が関与する場合,一方の保険医療機関のみならず他方の保険医療機関も自ら主体となって療養の給付を行ったと評価されるためには,各保険医療機関の医師等が当該患者の治療等のために行った行為の具体的内容及びその関与の程度,各保険医療機関における物的設備等の負担の有無及び程度,他方の保険医療機関が当該患者の治療等に関与することとなった経緯及び双方の保険医療機関の関係等の事情を考慮して,他方の保険医療機関における関与が,人と物とが結合された組織体である保険医療機関として,自ら主体となって当該患者に対しその傷病の治療等に必要かつ相当と認められる医療サービスの給付を行ったものと評価することができるか否かという観点から判断することが相当である。
2 ①原告が行った麻酔関連医療業務は手術における医師その他の医療従事者による各種の医療関係行為の一環として行われたものと評価されること,②当該手術に必要な設備や器具,薬剤等については原告が業務委託契約を締結した相手方の病院が全て用意し提供したものであること,③原告が業務委託契約を締結した相手方の病院は,麻酔専門医である原告との間で業務委託契約を締結することによって,麻酔に関する専門的な知識経験を有する医師を安定的に確保し,もって病院における手術の安全性を高めようという趣旨から原告に麻酔関連医療業務に行わせたものであること等の事情に鑑みると,原告が行った麻酔施術は,相手方の病院が実施した手術に包摂され,その一部を成すものとして医療サービスの給付(療養の給付)を構成するものというべきであり,原告が,人と物とが結合された組織体である保険医療機関として,自ら主体となって当該患者に対しその傷病の治療等に必要かつ相当と認められる医療サービスの給付を行ったと評価することはできない。したがって,原告が自ら主体として療養の給付を行ったと認めることはできないから,原告が相手方の病院から支払を受けた麻酔関連医療業務に係る報酬の金額は租税特別措置法26条1項にいう「社会保険診療につき支払を受けるべき金額」に該当しない。

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